2005年04月29日

αグルコシダーゼ阻害薬

糖質の消化・吸収を遅らせて、食後の高血糖をおさえるお薬です。食事の直前に飲むと、食後の血糖の上がりが緩やかになります。

αグルコシダーゼ阻害薬の種類

一般名 商品名 1錠中の含有量(mg) 1日の使用量(mg)
アカルボース グルコバイ 50, 100 150-300
ボグリボース ベイスン 0.2, 0.3 0.6-0.9

一般名と商品名については、SU剤の表の下の説明を参照してください。

αグルコシダーゼ阻害薬の作用

食後の血糖値を抑える

炭水化物(糖質)は、小腸の粘膜にあるαグルコシダーゼという酵素の働きで、ブドウ糖などの単糖類に分解されて、小腸から吸収されます。αグルコシダーゼ阻害薬は、このαグルコシダーゼの働きを抑える薬です。それにより、炭水化物を食べたとき、炭水化物の吸収がゆっくりとなり、食後に血糖値が上がるのを抑えることができます。

空腹時(朝食前)の血糖値があまり高くなくて、食後の血糖値が高い方に適しています。また、他の糖尿病治療薬、インスリンとも相性がいいため、他の薬と一緒に使うことが多い薬です。

糖尿病の予防効果

STOP-NIDDMという研究で、αグルコシダーゼ阻害薬のグルコバイが、耐糖能異常(境界型)から2型糖尿病への悪化を抑制したと報告されています。グルコバイにより本当に糖尿病の発症を抑えられたのか、単に糖尿病の発症を遅らせているだけなのかは議論のあるところです。また、日本では(保険上)、糖尿病以外の方には、グルコバイの投与は認められていません。

αグルコシダーゼ阻害薬を飲むときの注意点

食直前に服用を

この薬は、薬を飲むタイミングが重要なお薬です。食事の直前に飲むと、食後の血糖を良く抑えることができます。食事30分前や食後では、あまり効きません。食事の直前に飲むというのがこのお薬のポイントです。

おなかがはる、おならが増えるなどの副作用

αグルコシダーゼ阻害薬により、吸収がおさえられた炭水化物は、一部は大腸まで達して、腸内細菌により発酵されてから吸収されます。腸内で発酵が起こると、腸内ガスが発生します。そのため、このお薬を飲むと、おなかがはったり、おならが増えることがよくあります。また、下痢気味になったり、便秘気味になることもあります。おなかがはったり、おならが増えたりする副作用は、程度の差はありますが、ほとんどの方にが出ます。2,3ヶ月飲んでいると、徐々に症状が治まってくることが多いです。

おなかがはったり、おならが増えるため、飲むのをやめてしまう人が多い薬でもあります。患者さんにお話を聞くと

  • 「実は飲んでいません」
  • 「お薬がかなり余っています」

という方が多いです。食事の前に飲むお薬なので忘れやすいということもあると思いますが、おなかの症状のために、やめたり、減らしたりしている方も多いです。しかし、炭水化物の吸収をゆっくりにするという、他の薬にはみられない作用があるため、良く使われるお薬です。また、太りにくいお薬でもあり、良いお薬です。少ない量から初めて、徐々に薬に慣れると良いです。

おなかの手術を受けたことのある人、腸閉塞になったことのある人は、この薬により腸閉塞になる可能性があるため、注意が必要です。

低血糖のときはかならずブドウ糖を!!

このお薬だけで、低血糖になることはまずありません。αグルコシダーゼ阻害薬は、他の糖尿病治療薬やインスリンとも相性の良いお薬です。経口血糖降下薬やインスリンと、αグルコシダーゼ阻害薬を一緒に使っているときに、低血糖を起こすことがあります。その時には、必ずブドウ糖をとるようにしましょう。αグルコシダーゼ阻害薬は、糖質の分解を抑えて糖質の吸収を遅らせるお薬なので、お砂糖などをとってもすぐに血糖値は上がりません。ブドウ糖であれば、分解されずそのまますぐに吸収されるので、問題ありません。

αグルコシダーゼ阻害薬を飲んでいるときの低血糖には、必ずブドウ糖を使うようにしましょう。低血糖の説明も、ぜひ読んでください。

肝機能障害

重篤な肝機能障害の報告があります。定期的な肝機能検査が必要です。重篤な肝機能障害が起こる頻度は非常に低いです。

>>人気blogランキング ← 少しでも参考になった方はクリックしていただけるとうれしいです

posted by ベスト at 09:44 | Comment(0) | TrackBack(1) | 経口血糖降下薬

2005年04月23日

チアゾリジン誘導体

インスリン抵抗性を改善して、血糖値を下げるお薬です。

チアゾリジン誘導体の種類

一般名 商品名 1錠中の含有量 1日の使用量
塩酸ピオグリタゾン アクトス 15, 30 30

一般名と商品名については、SU剤の表の下の説明を参照してください。

チアゾリジン誘導体の作用

インスリン抵抗性を改善して(インスリンの効き目を良くして)、血糖値を下げるお薬です。正確な作用機序は、研究が進んでいるところです。

今までにわかっている作用機序を少しだけ解説します(興味のある方だけ、読んでいただければ大丈夫です)。難しい話になりますが、チアゾリジン誘導体はPPARγという核内受容体のアゴニスト(刺激する薬)です。主には、脂肪細胞に働きますが、筋肉、肝臓を含めて全身に作用します。

  • チアゾリジン誘導体は、脂肪細胞において、脂肪酸の取り込みに必要な蛋白質を増やします。それにより、脂肪酸が脂肪組織に集まるようになり、筋肉や肝臓に取り込まれる脂肪酸が減ります。筋肉や肝臓に脂肪酸がたまらなくなるため、インスリンの効き目が良くなります(筋肉や肝臓に脂肪酸がたまるとインスリンの効き目が悪くなります)。
  • 脂肪細胞には、中性脂肪を貯めこんだ大きな細胞と、あまり貯めこんでいない小型の細胞があります。脂肪細胞は、さまざまな物質(アディポサイトカイン)を出しています。大きな脂肪細胞からは、インスリンの効き目を悪くするようなアディポサイトカインが多く出ています。小型の脂肪細胞からはインスリンの効き目を良くするアディポサイトカインが多く出ていて、インスリンの効き目を悪くするアディポサイトカインはあまり出ていません。チアゾリジン誘導体は、小型の脂肪細胞を増やして、大きな脂肪細胞を減らす働きをしています。それにより、インスリン抵抗性を良くするアディポサイトカインが増えて、インスリン抵抗性を悪くするアディポサイトカインが減ります。それにより、インスリン抵抗性が改善します。

以上のような機序で、インスリン抵抗性を良くしていると考えられていますが、まだまだ研究中のお話です。

チアゾリジン誘導体を飲むときの注意点

浮腫

副作用として、むくみがあります。特に、女性でむくむことが多いです。女性では、少ない量(15mg)からお薬を始めることが勧められています。心不全の方は、病状が悪化する可能性があるので、使用しません。

体重増加

体重が増加することが多い薬です。一つの原因としては、むくみによる体重増加があります。食欲が増える可能性も否定できません。食事療法を守れている人は、体重が増加しにくいです。

肝機能障害

チアゾリジン誘導体のトログリタゾン(ノスカール)というお薬は、重篤な肝機能障害を起こしたため、販売中止となっています。ピオグリタゾン(アクトス)では、肝機能障害の発症率は低いことがわかっていますが、定期的な肝機能の検査が必要です。また、B型肝炎、C型肝炎の方には使用しません。

低血糖

このお薬だけでは低血糖を起こすことはほとんどありません。他の経口血糖降下薬、インスリンを使っている場合には、低血糖の対策が必要です。

>>人気blogランキング ← 少しでも参考になった方はクリックしていただけるとうれしいです

posted by ベスト at 14:30 | Comment(0) | TrackBack(1) | 経口血糖降下薬

2005年04月19日

速効型インスリン分泌促進薬

SU剤と同じように、インスリンの分泌(出)を良くするお薬です。薬を飲むとすぐに効果が現れ、数時間以内に効果がなくなります。食事の直前に飲むことにより、食後の血糖値を下げるお薬です。

速効型インスリン分泌促進薬の種類

一般名 商品名 1錠中の含有量(mg) 1日の使用量(mg)
ナテグリニド スターシス
ファスティック
30, 90 270
ミチグリニドカルシウム水和物 グルファスト 5, 10 30

一般名と商品名については、SU剤の表の下の説明を参照してください。

速効型インスリン分泌促進薬の作用

速効型インスリン分泌促進薬は、SU剤と同じように、インスリンの分泌(出)を良くして、血糖値を下げる薬です。SU剤は、ゆっくりと長く効き、一日の血糖値を全体的に下げる薬です。それに対して、速効型インスリン分泌促進薬は、お薬を飲むとすぐに、すい臓に効いて、すい臓からインスリンが出ます。効き目が切れるのも早いです。

したがって、食事の直前(30分前ではなく)に飲むと、食後の血糖値を下げることができます。食事30分前に飲むと、食事までの間に血糖値が下がり、低血糖を起こす可能性があります。必ず、食直前に飲むようにしてください。

SU剤と比べると、血糖値を下げる作用は弱いです。また、主に食後の血糖値しか下げません。したがって、空腹時(朝食前の)血糖値はあまり高くなくて、食後の血糖値が高い人に、適している薬です。SU剤と一緒に飲んでも効果はほとんどなく、一緒に飲むことは認められていません。

速効型インスリン分泌促進薬を飲むときの注意点

くり返しになりますが、食直前に飲むようにします。食事30分前に飲むと低血糖になる可能性があり、食後に飲むと薬がうまく吸収されず、十分な効果が出ません。食直前に飲み忘れた場合は、その1回分は抜かしましょう(忘れない工夫も大切です)。

副作用としては、低血糖がありますが、SU剤と比べると起こりにくいです。また、お薬が効いている時間も短いため、低血糖が長く続くこともあまりありません。しかし、肝臓、腎臓の悪い人は低血糖を起こしたり、低血糖が長く続く可能性があります。透析を必要とするような腎傷害のある人は、この薬を飲んではいけません。

>>人気blogランキング ← 少しでも参考になった方はクリックしていただけるとうれしいです

posted by ベスト at 23:43 | Comment(0) | TrackBack(0) | 経口血糖降下薬

2005年04月16日

スルホニル尿素薬、SU剤

糖尿病の飲み薬にはさまざまな種類のお薬があります。その中でも、スルホニル尿素薬は古くから糖尿病の治療に使われている薬です。また、血糖値を下げる作用が強いお薬です。スルホニル尿素薬は、SU(エス・ユー)剤と呼ばれることが多いです。

スルホニル尿素(SU, sulfonylurea)薬の種類

一般名 商品名 1錠中の含有量(mg) 1日の使用量(mg)
第一世代 トルブタミド ラスチノン
ジアベン
250, 500 250 - 1500
アセトヘキサミド ジメリン 250, 500 250 - 500
クロルプロバミド アベマイド 250 100 - 500
トラザミド トリナーゼ 100, 250 100 -300
グリクロピラミド デアメリンS 250 250 - 500
グリブゾール グルデアーゼ 125, 250 125 - 500
第二世代 グリベンクラミド オイグルコン
ダオニール
1.25, 2.5 1.25 - 7.5
グリクラジド グリミクロン 40 40 - 120
第三世代 グリメピリド アマリール 1, 3 1- 6

ここで、一般名というのは、主に専門的に薬を扱う場合に使う名前です。一つの薬に対して、基本的に一つの一般名しかありません。一方、商品名とは、製薬会社などがつけた商品の名前です。同じお薬でも、作る製薬会社により名前が違うことがあります。上の例で言えば、第二世代のグリベンクラミド(一般名)は、製薬会社によりオイグルコン、ダオニールと商品名は異なりますが、含まれている薬の成分は同じです。

表にあげたとおり、非常に多くの薬がありますが、実際よく使われているのは第二世代、第三世代の薬です。第一世代の薬では、ラスチノン、ジアベンは使用することもありますが、他の薬はあまり使用することはないと思います。

スルホニル尿素薬の作用

すい臓のベータ細胞に働きかけて、インスリンの分泌(出)をよくする薬です。血糖値を下がる作用は、糖尿病の飲み薬の中では強いお薬です。しかし、もともと、自分のすい臓からまったくインスリンが出ていない人には効きません。

スルホニル尿素薬は、一日の血糖を全体的に下げます。1日1回または1日2回(朝、夕)で飲むことが多いです。お薬が効いている時間は、お薬の種類により違います。効果は徐々に弱くなりますが、数日間ゆっくりと効いていることが多いです。とくに、オイグルコン、ダオニールは効果が長く続きます。

血糖値を下げる作用は、お薬の種類により異なります。だいたいの目安として

  • オイグルコン、ダオニール 1.25mgとアマリール1mgがだいたい同じ効果があります。
  • グリミクロン 40mg錠が1-2錠とアマリール 1mgがおおよそ同じ効果です。

薬の効き具合は人により大きく違うため、少ない量から始めて徐々に増やしていきます。

スルホニル尿素薬を飲むときの注意点

糖尿病の飲み薬に書きましたとおり、お薬が始まったからといって、食事と運動による管理をおろそかにしてはいけません。食事療法がおろそかになっていると、スルホニル尿素薬により太ってしまいます。太るとお薬が効きづらくなり、血糖値が上がり、さらにお薬を増やすという悪循環になる可能性があります。

スルホニル尿素薬のもっとも注意しなければならないのは、血糖が下がりすぎること(低血糖)です。少量でも、血糖値が下がることがあるので注意が必要です。また、スルホニル尿素薬の低血糖は、長く続いたり、いったん血糖値が上がっても、再び、低血糖になることがあります。低血糖についての説明もぜひ読んでください。肝臓の悪い方、腎臓の悪い方、高齢の方は低血糖がより長く続く可能性があります。

>>人気blogランキング ← 少しでも参考になった方はクリックしていただけるとうれしいです

posted by ベスト at 13:11 | Comment(0) | TrackBack(0) | 経口血糖降下薬

2005年04月12日

糖尿病の飲み薬

薬物療法を始めるにあったって

まずは、糖尿病の治療をご覧ください。。そこで説明しました通り、2型糖尿病では、薬物療法を行うときも、食事療法、運動療法が基本です。ときどき、

  • 「お薬を飲んでいるから、もう食事や運動は関係ない」

とおっしゃる方がいますが、そんなことはありません。特に、食事療法が守れないまま、薬物療法を行うと、どんどん太っていくことがあります。とはいうものの、食事療法、運動療法を完璧に行うことは、難しいことです。 食事や運動などの生活習慣を変えるのに何ヶ月も何年も格闘している間に、高血糖が大きな問題を起こす可能性もあります。ある程度、食事療法、運動療法を行っても、目標を達成できないときは、薬物療法を考えたほうがよいです。たとえ少し太ってしまっても、悪い血糖でそのまま過ごすよりはずっといいことで、糖尿病の合併症を防ぐのに役立ちます。

飲み薬とインスリン注射

糖尿病の薬物療法は、大きく、飲み薬とインスリン注射に分けることができます。飲み薬は、以下の5つのグループに分けることができます。

  1. スルホニル尿素(SU, sulfonylurea)薬
  2. 速効型インスリン分泌促進薬
  3. ビグアナイド(BG)薬
  4. α-グルコシダーゼ阻害薬
  5. チアゾリジン誘導体

1.2はインスリンの出を良くさせて、血糖値を下げる薬です。3,4,5はインスリンの出を良くさせるのではなく、それ以外の方法で血糖値を下げる薬です。

糖尿病の治療薬を使うことは、実は食事療法を守ったり、運動する時間を作ったりするよりは簡単なことです。食事療法や運動療法はなかなか守れなくても、内服薬、インスリン注射はしっかりとやっている方もいます。しかし、薬ならではの注意点もあります。

薬を使うにあたって、

  1. その薬は、どのようにして血糖値を下げるのか(薬の作用機序)
  2. 薬を飲むタイミング(糖尿病の薬では飲むタイミングが重要な薬があります)
  3. 薬の副作用、注意点
  4. 低血糖について

を知っておくことは重要です。

代表的な飲み薬

糖尿病の代表的なお薬は、以下のとおりです。少なくとも御自分の飲んでいる薬については、知っておくとよいと思います。それぞれのお薬について、別の記事で詳しく説明してあります。クリックしてご覧ください。

種類 主な薬 主な作用
スルホニル尿素薬
SU剤
(sulfonylurea)
アマリール
オイグルコン
ダオニール
グリミクロン
ラスチノン
ジアベン
インスリンを出させる
薬が効いている時間は長い
速効型インスリン分泌促進薬 スターシス
ファスティック
グルファスト
インスリンを出させる
薬が効いている時間は短い
食事の直前に飲むと、食後の血糖値を抑えることができる
ビグアナイド(BG)薬 メルビン
メデット
グリコラン
ジベトスB
肝臓で糖が作られるのを抑える
α-グルコシダーゼ阻害薬 グルコバイ
ベイスン
糖の消化を抑えて、吸収を遅らせることにより
食後の血糖値を抑える
チアゾリジン誘導体 アクトス インスリンの効き目を良くする

インスリンについては、別にまた説明したいと思います。

>>人気blogランキング ← 少しでも参考になった方はクリックしていただけるとうれしいです

posted by ベスト at 08:10 | Comment(0) | TrackBack(0) | 経口血糖降下薬

a_blt021.gifこのブログの目次へ

×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。