2005年04月15日

低血糖とは

糖尿病のお薬の話を進める前に、低血糖の話をしておきたいと思います。インスリン治療や糖尿病の飲み薬を使っている方には、低血糖が起こる可能性があるからです。

低血糖の症状

血糖値が下がり始めると、体は血糖値をなんとか上げようとして、血糖値を上げるホルモンを出します。血糖値を上げるホルモンにはグルカゴン、カテコールアミン、成長ホルモン、副腎皮質ホルモンなどがあります。

  1. カテコールアミンが出ることにより、発汗、動悸(胸がどきどきする)、手指が振るえる、不安感などの症状が出ます。これは、警告の症状です。このときに、「まぁ、大丈夫だろう」と放っておかずに、適切な対処をすることが大切です。
  2. このまま、放っておいて、血糖値がさらに下がると、脳の働きが低下してきます。そのため、目のかすみ、眠気、生あくびなどの症状が出ます。
  3. さらに血糖値が下がると、意識が悪くり、意識を失ってしまいます。けいれんがおこることもあります。

1の症状は、体がなんとか血糖値をあげようとしている反応です。このときに適切な対処をすれば、大きな問題はありません。どの症状が出るかは、個人差があります。同じ人では、だいたい同じ症状が出ることが多いです。自分の症状を覚えておくようにしましょう。

2,3は、脳が十分に機能できなくなり、出てくる症状です。脳は必要なエネルギーのほとんどをブドウ糖に頼っています。したがって、血糖値が下がると脳が十分働かなくなるのです。

血糖値がいくつなら、低血糖?

では、どのくらいの血糖値になると、低血糖症状が出るのでしょうか?おおよその目安として、血糖値が60-70mg/dl以下になると、症状が出ることが多いです。しかし、低血糖症状が出る血糖値は、人により異なります。普段血糖値が高い人は、100mg/dlでも低血糖症状が出ることがあります。逆に、普段血糖値が低い人は、60mg/dlでも低血糖症状が出ないことがあります。また、低血糖を何度も繰り返していると、血糖値が下がっても、発汗、動悸、手指が振るえるなどの症状がないまま、意識が悪くなることがあります。

低血糖への対処

低血糖の症状がでたら、放っておいてはいけません。すぐに対処する必要があります。

血糖値がすぐに測れる状況であれば、血糖値を測ります。本当に血糖値が低いかどうかがわかります。すぐに測れないときは、測る必要はありません。

意識がはっきりしているときは、ブドウ糖10g程度を摂取します。砂糖の場合は10-20g程度を飲みます。ブドウ糖のほうが、血糖がすぐに回復します。αグルコシダーゼ阻害薬(ベイスン、グルコバイ)を飲んでいるときは、必ずブドウ糖を飲むようにします。ブドウ糖以外では、血糖が回復するのが、遅れてしまいます。普通は5-10分ぐらいで、低血糖の症状がとれます。15分経っても症状がとれない場合は、もう一度、ブドウ糖、砂糖を飲むようにします。

意識がはっきりしていなくて、ブドウ糖、砂糖を飲めない場合は、ブドウ糖、砂糖をくちびると歯ぐきの間に塗って、すぐに医療機関を受診するようにします。そのほかの方法としては、グルカゴンを注射する方法があります。グルカゴンは家族が注射することができますが、医師からの処方、指導が必要です。意識を失っても、早く対処すれば、意識は完全に回復します。

意識が低下するほどの低血糖を起こした場合は、意識が回復しても医療機関の指示を受けることをお勧めします。とくに、飲み薬(その中でもスルホニル尿素薬)で低血糖を起こしたときは、再び低血糖を起こしたり、意識が再び低下する可能性があるため、必ず医療機関で治療を受けるようにします。

低血糖はすぐ対処を

低血糖はすぐに対処しなくてはいけません。その理由はいろいろあります。

  • 放っておくと、意識を失う可能性があります。
  • たとえ意識を失わなかったとしても、血糖値を上げるホルモンが出ることにより、低血糖の反動として、その後、血糖値が急上昇することがあります。
  • 何回も低血糖を繰り返すと、発汗、動悸、手指の震えなどの症状が出にくくなります。

低血糖を放っておくのは危険です。必ず、対処するようにしましょう。また、低血糖にすぐ対処できるように、ブドウ糖、砂糖は常に携帯するようにしましょう。あめ、氷砂糖、チョコレートなどは、ないよりはましですが、血糖値が上がるのに時間がかかってしまいます。砂糖はペットシュガー(袋入りの砂糖)が持ち運びに便利です。

低血糖の予防

低血糖が起こりやすいのは

  • 飲み薬、インスリンの量が多い
  • 食事が遅れた
  • 食事の量が少ない
  • 運動をしている途中
  • 運動をした後

などがあります。低血糖が起こったときは、原因を主治医とともに探して、可能であれば避けるようにしなければいけません。飲み薬、インスリンの量が多いのであれば減らす必要があります。運動すると血糖値が下がるのであれば、運動するときはインスリンの量を減らしたり、補食で対処する方法もあります。主治医と対処法をよく相談するようにしましょう。

低血糖を恐れすぎない

よい血糖値を目指すと、どうしても低血糖を起こしやすくなります。低血糖をあまりに恐れて、血糖値を高めにしていると、合併症が起こりやすくなります。低血糖は適切に対処すれば、怖いものではありません。低血糖の対策をよく身につけて、よい血糖値を目指すようにしましょう。

>>人気blogランキング ← 少しでも参考になった方はクリックしていただけるとうれしいです

posted by ベスト at 00:05 | Comment(1) | TrackBack(0) | 糖尿病の最重要知識

2005年03月10日

糖尿病の治療

2型糖尿病の治療

2型糖尿病の治療の原則は

  • 食事療法
  • 運動療法
  • 薬物療法(飲み薬、インスリン注射)

の3本柱です。

今回は、それぞれについてごくごく簡単に説明したいと思います。

食事療法

食事療法の基本は

  • 適切なカロリーの摂取
  • 糖質、脂質、蛋白質の適切なバランスをとる

です。

食事療法は、運動療法や薬物療法をしていない人も、している人も必須です。 血糖値が高いときに、食事療法をせずにカロリーの高い食事をすると、

  1. ますます血糖値は上がります。
  2. ここで、食事療法をせずに、薬物療法を行うと、一時的には血糖値は下がるかもしれません。
  3. 食事で消化・吸収されたブドウ糖は、一部はエネルギーとして使われます。余ったものは最終的には肝臓、筋肉、脂肪などに貯められます。食事が多くなっても、使われるエネルギーは変わりません。それでも、血糖値が下がったということは、貯め込まれるエネルギーが多くなったということです。それは、主に脂肪になります。(糖の動きの説明もご覧ください)
  4. 脂肪に貯められるということは、太るということです。
  5. 太ると、インスリンの効きが悪くなります。
  6. インスリンの効きが悪くなると、薬の効果が弱くなり、血糖値が上がります。
  7. 血糖値を下げるためにお薬を増やすことになり、さらに太ってしまい、インスリンの効きが悪くなり、血糖値が上がり、血糖値を下げるためにお薬を増やし、さらに太ってしまい・・・・

というように悪循環になってしまいます。

この悪循環を避けるためには、適切なカロリーの摂取が必要になります。 適切なカロリーであれば、お薬を使っても、どんどん太っていくということはありません。 詳しくはまたお話したいと思いますが、少なくとも、体重が増えない程度の食事にはしないといけません。 繰り返しになりますが、食事を守っているときにお薬を使えば、どんどん太っていくということはありません。

運動療法
  • 運動療法は、インスリンの効きを良くします。 したがって、インスリンの出る量が変わらなくても、運動をすると血糖値はよく下がります。
  • 運動により、エネルギーが消費され、体脂肪、体重が減ります。
  • 高血圧や高脂血症をよくしたり、狭心症、心筋梗塞などの予防効果もあります。

運動療法をすると、たとえ体重が減らなくても、インスリンの効き目はよくなり、高脂血症もよくなります。 食事療法だけで、体重を減らすと、体脂肪とともに筋肉も落ちてしまします。 しかし、運動療法も一緒に行うことにより、筋肉がおちていくのをある程度抑えることができます。

運動療法はこのように、いろいろな効果があります。 しかし、糖尿病の合併症や、糖尿病以外の病気があると、 場合により運動療法ができないことがあります。積極的に運動療法をして良いかは、必ず主治医に確認するようにしましょう。

薬物療法

薬物療法を行うときも、食事療法、運動療法が基本です。 特に食事療法が守れないまま、薬物療法を行うと、先ほどご説明したとおり、どんどん太っていくことがあります。

以上のとおり、2型糖尿病の治療は

  • 食事療法
  • 運動療法
  • 薬物療法(飲み薬、インスリン注射)

が基本です。

しかし、同じ2型糖尿病でも、血糖値が上がっている原因は、人により異なります。

  • インスリンの効きが悪いのが、糖尿病の主な原因となっている人
  • インスリンの出が悪いのが、糖尿病の主な原因となっている人

などさまざまです。(糖尿病の分類もご覧ください)

ごくごく単純にいうと

  • インスリンの出が悪い人は、薬物療法が必要になることが多いです。もちろん、食事療法、運動療法も必要です。
  • インスリンの出はいいものの、インスリンの効きが悪い人は、食事療法、運動療法が中心となります。 食事療法、運動療法でよい血糖コントロールが達成できなければ、薬物療法が必要です。

薬物療法を行うにしても、インスリンがよく出ているか、出ていないかで、使う薬が異なってきます。

この点についてはまた説明したいと思います。

1型糖尿病の治療

1型糖尿病は、基本的にはインスリンの分泌が著しく低下しているため、インスリン治療が必要になります。

食事療法については、少なくとも、太らないようなカロリー摂取にする必要があります。

運動療法については、血糖コントロールのために必ずしも有効との証拠はありませんが、 体力の保持、増進に役立ったり、、高血圧や高脂血症を良くしたり、狭心症、心筋梗塞などの予防効果があります。

食事療法、運動療法、薬物療法(糖尿病の飲み薬、インスリン)の詳しいことは、また説明していきたいと思います。

>>人気blogランキング ← 少しでも参考になった方はクリックしていただけるとうれしいです

posted by ベスト at 00:37 | Comment(0) | TrackBack(0) | 糖尿病の最重要知識

2005年02月23日

境界型とは

75g糖負荷試験で、『糖尿病』と診断されたときは、定期的な医療機関の受診が必要です。 最終的に『境界型』と診断されたときは、どうすればよいのでしょうか?

境界型は、糖尿病の3大合併症を起こすことはほとんどありませんが、

  1. 糖尿病に移行しやすい
  2. 食後の血糖値が高いと、動脈硬化症が起こりやすい

という、大きな問題があります。

「境界型」から糖尿病に移行しないためには

境界型の人の4-6%は、毎年、糖尿病へ悪化します。 では、糖尿病へ悪化するのを予防することはできるのでしょうか?

米国で行われたDPP(Diabetes Prevention Program)という大規模臨床試験で、 食事、運動という生活習慣を改善することにより、糖尿病に悪化するのを抑えられることがわかりました。

低カロリー食、低脂肪食と 1週間に150分以上(1日30分の運動を5日間)の運動をすることによって、体重を7%減少させることを目標に、生活習慣の改善を指導されました。 その結果、4年間で糖尿病への悪化が58%低下しました。

また、メトホルミン(メルビン)という糖尿病の治療に用いる薬でも、 糖尿病への悪化するのを抑えることができましたが、 生活習慣改善のほうが、効果が大きかったと報告されています。

糖尿病に移行しないためには

  1. 適度な運動
  2. 太っている方は減量

が重要です。

減量は、いわゆる標準体重まで減らさなくても、 今の体重の5-10%減らすだけでも、効果があると考えられています (身長170cm、体重80kgの人であれば、4-8kgの減量でも効果があります!)。

「食後高血糖」と動脈硬化

同じ「境界型」でも

  • 空腹時の血糖値が高い「境界型」
  • 食後の血糖値が高い「境界型」

があります。

糖尿病に悪化しやすいという点では、どちらも同じです。しかし、 食後の血糖値が高い「境界型」は動脈硬化も進みやすくなります。 動脈硬化とは血管が狭くなったり、つまったりして、 血液がスムーズに流れなくなる病気です。

  • 心臓の血管に動脈硬化が起こると、狭心症や心筋梗塞になります。
  • 頭の血管に動脈硬化が起こると、脳梗塞になります。

糖尿病では、動脈硬化が起こりやすくなります。 糖尿病まで血糖値が高くなくても、 食後の血糖値が正常範囲を超える「境界型」でも、動脈硬化が起こりやすいことがわかっています。 とくに、

  • 血圧が高い、
  • コレステロールが高い、
  • タバコを吸う

などが重なると、動脈硬化が起こりやすくなります。

「境界型」の人で、 血圧が高い人、 コレステロールが高い人 は医療機関を受診し、しっかりと治療しましょう。 血圧、コレステロールが高くても、症状はほとんどないため、 定期的な血圧測定、血液検査が必要です。

「境界型」の人に、糖尿病の治療薬を使うと、動脈硬化が起こりにくくなることが、海外で報告されています。 しかし、現在、日本では「境界型」の人に糖尿病治療薬を使うことは 認められていません(保険診療では)。

>>人気blogランキング ← 少しでも参考になった方はクリックしていただけるとうれしいです

posted by ベスト at 00:13 | Comment(19) | TrackBack(0) | 糖尿病の最重要知識

2005年02月20日

糖尿病の気(け)があるといわれたら・・・

健康診断などで、

  • 「糖尿病の気がある」
  • 「糖尿病ではなく境界」
  • 「境界型糖尿病」
などと言われたことはないでしょうか?これはどういう意味でしょうか?

まず確かなことは、

「まだ糖尿病じゃないから大丈夫だろう」

と考えることは大間違いで、大変危険だ、ということです。 真剣に受け止めないといけません。

空腹時血糖値だけではわからない!?

健康診断の時は、食事をしないで血液検査を受けていると思います。つまり検査でわかるのは、空腹時の血糖値です。

  • 空腹時の血糖値が正常型(110mg/dl未満)
  • 糖尿病型(126mg/dl以上)
のいずれでもないときを
  • 「境界型」(空腹時血糖値が110〜125 mg/dl)
といいますが、
  • 「糖尿病の気がある」
  • 「境界」
などの説明を受けることが多いようです。

空腹時の血糖値が「境界型」でも、食事をした後に血糖値がかなり上がり、 本当は糖尿病のことがあります。(日本のデータでは、30%以上は糖尿病 といわれています)

つまり、空腹時の血糖値だけでは、わからないのです。 したがって、空腹時の血糖値で「境界型」といわれた方は、 本当に「境界型」なのか、実は「糖尿病」なのかを調べる必要があります。

お勧めは75g糖負荷試験

食事の後の血糖値といっても、食事の内容により食後の血糖は大きく変わります。 そこで、検査のために作られたのが、75gの糖を含んだ飲み物です。 これを飲んだ後、数回(例えば、30分、60分、120分後)血液検査をして、 血糖値の上がり具合をみると、糖尿病型か否かが判定できます。

この検査を、75g糖負荷試験(75gOGTT;oral glucose tolerance test)といいます。

120分後の血糖値が

  • 140mg/dl未満であれば『正常型』、
  • 200mg/dl以上であれば『糖尿病型』、
  • その間(140-199mg/dl)であれば『境界型』

です。

糖尿病の診断は、75g糖負荷試験がすべてではありません。 血糖値があまりにも高いときは、75g糖負荷試験をしなくても、糖尿病と診断できることもあります。 逆に、このようにあまりにも血糖値が高い場合は、75g糖負荷試験を受けると危険です。

  • 「糖尿病の気がある」
  • 「糖尿病ではなく境界」
  • 「境界型糖尿病」

などといわれたら、医療機関で、どのように対処したらよいか、相談していただくのが良いと思います。

最終的に「境界型」ときは、そのままなにもしなくて大丈夫なのでしょうか?

答えは「No」です。

境界型ついては、またお話したいと思います。

>>人気blogランキング ← 少しでも参考になった方はクリックしていただけるとうれしいです

posted by ベスト at 23:50 | Comment(0) | TrackBack(0) | 糖尿病の最重要知識

2005年02月18日

HbA1cの目標値

HbA1cの基準範囲は4.3-5.8%です。 糖尿病の方も、もちろん、この基準範囲内に入っていれば優等生ですが、 なかなか難しいこともあります。 HbA1cが上昇するにつれて、糖尿病合併症も起こりやすくなります。 では、目標値はどこにおけばよいのでしょうか?

HbA1cの目標値

「目標値は一人一人、異なります。主治医と相談して決めてください。」 が答えになってしまいます。

というのは、年齢、合併症の有無・程度、低血糖の有無、低血糖症状の有無、 糖尿病の治療法などなどにより、目標値は異なるからです。

一般論としては、HbA1c 6.5%以下が目標になります。

この値は、Kumamoto studyという臨床試験がひとつの根拠になっています。

6年間の経過で

  • 空腹時血糖値 < 110mg/dl
  • 食後血糖値  < 180mg/dl
  • HbA1c < 6.5%

を達成できていると、三大合併症の発症・進展がなかった、と報告されています。 ただし、諸外国の大規模臨床試験では、 「この値以下なら絶対に合併症が出ない」 というHbA1cの値はないとされています。

諸外国では、HbA1c 7%未満が、血糖コントロールの目標として採用されている場合が多いです。 HbA1cが上昇するにつれて、三大合併症は起こりやすくなりますが、 HbA1cが8.0%を超えると、合併症が非常に起こりやすくなることがわかっています。

まとめ

HbA1cは低血糖がなければ、できる限り低いほうが良いです。

まず、HbA1cが8.0%以上は、避けるようにしましょう。

次にHbA1cが7.0%未満を目指し、 6.5%未満を達成できるようにしましょう。

繰り返しになりますが、これはあくまでも一般論で、目標値は一人一人違います。 主治医とよく相談して決めてください。まとめを表にしました。

コントロールの評価とその範囲
指標 不可
不十分 不良
HbA1c (%) 5.8未満 5.8-6.5 6.5-7.0 7.0-8.0 8.0以上

>>人気blogランキング ← 少しでも参考になった方はクリックしていただけるとうれしいです

posted by ベスト at 14:39 | Comment(3) | TrackBack(0) | 糖尿病の最重要知識

2005年02月17日

HbA1cとは

医師 「今回は血糖コントロールがちょっと悪くなりましたねぇ。」

医師 「HbA1cが7.5%でした。」

患者 「採血の前日の夕食がいつもより、量が多くなったんですよ」

医師 「採血の前日の夕食で翌朝の血糖値は変わっても、HbA1cは高くなりませんよ」

HbA1cは過去1-2ヶ月間の血糖の状態を示す検査値

HbA1cはヘモグロビンエーワンシーと読みます。 そのほかグリコヘモグロビンや、省略してエーワンシーと呼ぶことがあります。 糖尿病と付き合っていくためには、ぜひ知っておきたい検査項目です。 血糖値の次に知っておくとよい検査値です。

しかし、時々、長く糖尿病で治療を受けている患者さんでも、HbA1cを知らない方が いらっしゃって、驚くことがあります。

HbA1cは、簡単にいうと、過去1-2ヶ月間の血糖値の平均値を知るための検査値です。

血糖値との違いは

血糖値は一日でも刻々と変化しています。 食事する前は低くても、食事をすると上がり、また日によっても変動します。 したがって、一回だけ血糖値を測定しても、長期間の血糖の状態を評価するのは困難です。 そこで、HbA1cの登場です。

HbA1cにより、採血する前の過去1-2ヶ月間の血糖の状態を把握できます。 血液検査の数日前から、食事や運動をがんばると、血糖値は下がるかもしれません。 しかし、HbA1cは1-2ヶ月間の血糖の状態の平均なので、短期間でそうそう下がることはありません。 検査の前だけ、食事や運動をがんぱって、血糖値を下げても、HbA1cはすぐには下がりません。

HbA1cを検査すると、1-2ヶ月間ずっと血糖値が良かったのか、検査のときだけ良かったのかがわかります。 HbA1cの値は、合併症が新たに出てしまったり、合併症が進んでしまったりするのと深い関わりがあります。

過去の血糖値がわかる理由

でも、どうして過去の血糖の状態がわかるのでしょうか?

Hb(ヘモグロビン)とは、赤血球の中にある赤い色素です。 ヘモグロビンは血液中の糖と結合します。 血糖値が高いほど、また高い状態が長く続くほど、ヘモグロビンは血液中の糖とどんどん結合します。 また一度、糖と結合すると、なかなか元に戻らなくなります。 糖と結合したヘモグロビンの割合(%)を測定するのがHbA1cです。 したがって、過去の血糖の状態が把握できるのです。

では、HbA1cは、いったいどのくらいにしておくと良いのでしょうか? 糖尿病の合併症を防ぐことができるのでしょうか? このことについてはまたお話したいと思います

>>人気blogランキング ← 少しでも参考になった方はクリックしていただけるとうれしいです

posted by ベスト at 00:55 | Comment(0) | TrackBack(0) | 糖尿病の最重要知識

2005年02月13日

糖尿病の診断、糖尿病は「糖尿」が本質ではない

「糖尿病」イコール「尿に糖が出る病気」ではありません。

糖尿病でも尿に糖が出ないこともあれば、糖尿病でなくても尿に糖が出ることがあります。 (ただし、尿に糖が出ているときは糖尿病の可能性が高いため、必ず検査を受けてください)

糖尿病は「血糖値」が高い病気

糖尿病とは「血糖値」(血液の中のブドウ糖の濃度)が高くなる病気です。 では、正常な血糖値とは、どのくらいなのでしょうか?

血糖値の正常域は、

  • 空腹時の血糖値が110 mg/dl未満
  • さらに、75gの糖を摂取したあと2時間後の血糖値が140 mg/dl未満
です。

糖尿病の診断基準

下記のいずれかを確認できれば「糖尿病型」とします。

  1. 随時(食事や採血の時間に関係なく)血糖値が200 mg/dl以上
  2. 空腹時血糖値が126 mg/dl以上
  3. 75gの糖を摂取したあと(75g糖負荷試験)、2時間後の血糖値が200 mg/dl以上

たまたま検査のとき血糖値が高かったという可能性もあります。 そこで、別の日に行った検査で、「糖尿病型」が2回以上あれば、糖尿病と診断します。 ただし次のうち1つがあれば、「糖尿病型」が1回でも、糖尿病と診断します。

  1. 糖尿病の典型的な症状がある (のどが渇く、水分をとる量が多い、おしっこの量が多い、体重が減る)
  2. HbA1cが6.5%以上(HbA1cは血糖の平均値をあらわす検査値です)
  3. 糖尿病性網膜症がある。

正常型でも糖尿病型でもない場合を「境界型」といいます。 境界型については今後また説明したいと思います。

まとめると、次の表のようになります。

75g糖負荷試験による判定区分
正常域 糖尿病域
空腹時血糖値 < 110 ≧ 126
75g糖負荷試験で2時間後の血糖値 < 140 ≧ 200
75g糖負荷試験の判定 両者を満たすものが正常型 いずれかを満たすものが糖尿病型
正常型にも糖尿病型にも属さないものが境界型

随時血糖値≧ 200も糖尿病型です。

以上のように、糖尿病の診断に「尿に糖が出る」ということは関係ありません。 血糖値が高くなると、「尿に糖が出る」ようになります。 血糖値がどのくらい高くなると、尿に糖が出るかは、人により異なります。 だいたい血糖値が170mg/dlぐらいになると、尿に糖が出ることが多いです。

したがって、糖尿病で血糖値が高いときは、尿に糖が出ます。 糖尿病でも血糖値があまり高くないときは、尿の中に糖は出ません。 尿に糖が出ないから安心ということはありません。 尿に糖が出なくても、血糖値が高ければ、合併症が進む可能性があります。 糖尿病の状態を正確に知るには「尿糖」ではなく「血糖値」の状態を知ることが必要です。

むかしは、糖尿病は「尿に糖が出る病気」と考えられていたので、このような名前がついてしまったのです。 現在では、糖尿病は「血糖値が高い病気」であり、血糖値が高くなると、「尿に糖が出る」ようになる、ということがわかっています。 したがって、本当は「高血糖症」、「高血糖病」のほうが良いかもしれません。

もっと詳しく知りたい方は日本糖尿病学会のホームページより 「糖尿病診断基準」をどうぞ。

>>人気blogランキング ← 少しでも参考になった方はクリックしていただけるとうれしいです

posted by ベスト at 18:45 | Comment(0) | TrackBack(0) | 糖尿病の最重要知識

2005年02月12日

糖尿病を放置しないで!

ある日の診察室で

患者 「今日、朝起きたら、突然、目が見えなくなって・・・」

患者 「すぐに眼科にかかったら、糖尿病のせいだって・・・」

患者 「内科にもかかるように言われて来ました・・・」

医師 「糖尿病っていわれたのは、今回が初めてですか?」

患者 「えぇ、10年ほど前に『糖尿病の気がある』って言われましたけど。」

患者 「糖尿病だって言われたことはないです。」

よく話を聞いてみると、10年前に健康診断で「糖尿病の気がある」と言われ、その後も血糖値が高いことがあったが、なにも症状がないため、そのまま放置していたという。
残念ながら、視力はいくらか戻っても、元に戻ることはないでしょう。

糖尿病 − 放置されやすい病気

厚生労働省の平成14年度糖尿病実態調査報告によると

  • 糖尿病が強く疑われる人」は約740万人
  • 糖尿病の可能性を否定できない人」は約880万人

で、計約1620万人にものぼります。まさに国民病ですね。

さらに驚くべきことに

「糖尿病が強く疑われる人」のうち治療を受けている人は50.6%

実に半分以上の方は治療を受けていませんでした。 どうして、こんなに治療を受けていない人が多いのでしょうか?

糖尿病は「無症状」のことが多い

糖尿病とは、血糖値が高くなる病気です。症状としては尿が多い(多尿)、 のどが渇いてよく水を飲む(口渇、多飲)、 体がだるく疲れやすいなどが知られています。 しかし、 このような自覚症状を訴えて「私は糖尿病ではないでしょうか」 と心配して検査を受けにいらっしゃる方は少数派です。

たいていは

  • 「健康診断で血糖値が高めと言われた。」
  • 「健康診断で糖尿病の予備軍といわれた。」
などと、おっしゃって来院される方が多いです。

というのは、 糖尿病は早期に症状が出る患者さんは少なく、全く無症状の方が多いからです。 この「無症状」というのが糖尿病の怖いところです。

ほんとに怖いのは合併症1 − 三大合併症

無症状でも、血糖値が少しでも高い状態が続くと、 糖尿病による「合併症」は静かに進行しており、 気づいたときには手遅れになっていることもあります。

糖尿病の合併症で代表的なものが

  1. 糖尿病による目の病気(糖尿病性網膜症)
  2. 糖尿病による腎臓の病気(糖尿病性腎症)
  3. 糖尿病による末梢神経の病気(糖尿病性神経障害)
で、三大合併症と呼ばれています。いずれも、比較的細い血管がやられておこる病気です。

  1. 糖尿病性網膜症は成人における失明原因の第1位であり、毎年約3000人が失明しています。
  2. 糖尿病性腎症は新規人工透析の第1位で毎年約11000人が透析導入となっています。
  3. 糖尿病性神経障害により手足のしびれや痛み、感覚が鈍くなる、下痢や便秘、ED(勃起障害)などが起こってしまいます。

ほんとに怖いのは合併症2 − 動脈硬化症

糖尿病は小さな血管だけではなく、大きな血管にもダメージを与えます。いわゆる「動脈硬化症」です。

  • 心臓の血管がダメージを受けると狭心症や心筋梗塞になります
  • 頭の血管がダメージを受けると脳梗塞になります
  • 足の血管がダメージを受けると閉塞性動脈硬化症という病気になります

動脈硬化症は、糖尿病でない人にも起こります。この点は、三大合併症とは違う点です。 しかし、糖尿病があると、動脈硬化になりやすく、さらに血圧の高い人、 コレステロールが高い人、タバコを吸う人は、動脈硬化症になりやすくなります。

合併症を防ぐのが目標

糖尿病の治療の目標は、一時的に症状をとることではありません。 三大合併症や動脈硬化が起こったり、悪化するのを防いでいくことが、大きな目標になります。 そのためには、糖尿病の早期発見、早期治療が必要になります。

しかし、残念ながら、先ほど述べましたとおり、「糖尿病が強く疑われる人」のうち、治療を受けている人は 50.6%とされています。実に半分以上の方は、治療を受けていないことになります。

健康診断で

  • 「血糖値が高め」
  • 「糖尿病の気がある」
  • 「糖尿病予備軍」

などと いわれた方は、ぜひ医療機関を受診し、検査を受けることをお勧めします。

症状がある人は、すぐに医療機関受診をお勧めしますが、

「症状が無いから大丈夫」、「今まで糖尿病を放っておいても大丈夫だからこれからも大丈夫」 ってことは決してありません!

>>人気blogランキング ← 少しでも参考になった方はクリックしていただけるとうれしいです

posted by ベスト at 13:42 | Comment(0) | TrackBack(0) | 糖尿病の最重要知識

a_blt021.gifこのブログの目次へ

×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。