糖尿病のお薬の話を進める前に、低血糖の話をしておきたいと思います。インスリン治療や糖尿病の飲み薬を使っている方には、低血糖が起こる可能性があるからです。
低血糖の症状
血糖値が下がり始めると、体は血糖値をなんとか上げようとして、血糖値を上げるホルモンを出します。血糖値を上げるホルモンにはグルカゴン、カテコールアミン、成長ホルモン、副腎皮質ホルモンなどがあります。
- カテコールアミンが出ることにより、発汗、動悸(胸がどきどきする)、手指が振るえる、不安感などの症状が出ます。これは、警告の症状です。このときに、「まぁ、大丈夫だろう」と放っておかずに、適切な対処をすることが大切です。
- このまま、放っておいて、血糖値がさらに下がると、脳の働きが低下してきます。そのため、目のかすみ、眠気、生あくびなどの症状が出ます。
- さらに血糖値が下がると、意識が悪くり、意識を失ってしまいます。けいれんがおこることもあります。
1の症状は、体がなんとか血糖値をあげようとしている反応です。このときに適切な対処をすれば、大きな問題はありません。どの症状が出るかは、個人差があります。同じ人では、だいたい同じ症状が出ることが多いです。自分の症状を覚えておくようにしましょう。
2,3は、脳が十分に機能できなくなり、出てくる症状です。脳は必要なエネルギーのほとんどをブドウ糖に頼っています。したがって、血糖値が下がると脳が十分働かなくなるのです。
血糖値がいくつなら、低血糖?
では、どのくらいの血糖値になると、低血糖症状が出るのでしょうか?おおよその目安として、血糖値が60-70mg/dl以下になると、症状が出ることが多いです。しかし、低血糖症状が出る血糖値は、人により異なります。普段血糖値が高い人は、100mg/dlでも低血糖症状が出ることがあります。逆に、普段血糖値が低い人は、60mg/dlでも低血糖症状が出ないことがあります。また、低血糖を何度も繰り返していると、血糖値が下がっても、発汗、動悸、手指が振るえるなどの症状がないまま、意識が悪くなることがあります。
低血糖への対処
低血糖の症状がでたら、放っておいてはいけません。すぐに対処する必要があります。
血糖値がすぐに測れる状況であれば、血糖値を測ります。本当に血糖値が低いかどうかがわかります。すぐに測れないときは、測る必要はありません。
意識がはっきりしているときは、ブドウ糖10g程度を摂取します。砂糖の場合は10-20g程度を飲みます。ブドウ糖のほうが、血糖がすぐに回復します。αグルコシダーゼ阻害薬(ベイスン、グルコバイ)を飲んでいるときは、必ずブドウ糖を飲むようにします。ブドウ糖以外では、血糖が回復するのが、遅れてしまいます。普通は5-10分ぐらいで、低血糖の症状がとれます。15分経っても症状がとれない場合は、もう一度、ブドウ糖、砂糖を飲むようにします。
意識がはっきりしていなくて、ブドウ糖、砂糖を飲めない場合は、ブドウ糖、砂糖をくちびると歯ぐきの間に塗って、すぐに医療機関を受診するようにします。そのほかの方法としては、グルカゴンを注射する方法があります。グルカゴンは家族が注射することができますが、医師からの処方、指導が必要です。意識を失っても、早く対処すれば、意識は完全に回復します。
意識が低下するほどの低血糖を起こした場合は、意識が回復しても医療機関の指示を受けることをお勧めします。とくに、飲み薬(その中でもスルホニル尿素薬)で低血糖を起こしたときは、再び低血糖を起こしたり、意識が再び低下する可能性があるため、必ず医療機関で治療を受けるようにします。
低血糖はすぐ対処を
低血糖はすぐに対処しなくてはいけません。その理由はいろいろあります。
- 放っておくと、意識を失う可能性があります。
- たとえ意識を失わなかったとしても、血糖値を上げるホルモンが出ることにより、低血糖の反動として、その後、血糖値が急上昇することがあります。
- 何回も低血糖を繰り返すと、発汗、動悸、手指の震えなどの症状が出にくくなります。
低血糖を放っておくのは危険です。必ず、対処するようにしましょう。また、低血糖にすぐ対処できるように、ブドウ糖、砂糖は常に携帯するようにしましょう。あめ、氷砂糖、チョコレートなどは、ないよりはましですが、血糖値が上がるのに時間がかかってしまいます。砂糖はペットシュガー(袋入りの砂糖)が持ち運びに便利です。
低血糖の予防
低血糖が起こりやすいのは
- 飲み薬、インスリンの量が多い
- 食事が遅れた
- 食事の量が少ない
- 運動をしている途中
- 運動をした後
などがあります。低血糖が起こったときは、原因を主治医とともに探して、可能であれば避けるようにしなければいけません。飲み薬、インスリンの量が多いのであれば減らす必要があります。運動すると血糖値が下がるのであれば、運動するときはインスリンの量を減らしたり、補食で対処する方法もあります。主治医と対処法をよく相談するようにしましょう。
低血糖を恐れすぎない
よい血糖値を目指すと、どうしても低血糖を起こしやすくなります。低血糖をあまりに恐れて、血糖値を高めにしていると、合併症が起こりやすくなります。低血糖は適切に対処すれば、怖いものではありません。低血糖の対策をよく身につけて、よい血糖値を目指すようにしましょう。
>>人気blogランキング ← 少しでも参考になった方はクリックしていただけるとうれしいです