一度インスリンを使うとやめられない??
「インスリンはくせになる??」で、 2型糖尿病の場合はインスリンをやめられるかどうかは、 ケースバイケースで、インスリンが出なくなっている理由によるとのお話をしました。 今回は、このことについて説明したいと思います。
糖毒性
2型糖尿病でインスリンを使うケースはいろいろありますが、血糖値が高いことが多いです。 血糖値が高くなると、なんとか血糖値を下げようと、すい臓のβ細胞はムチ打たれ、がんばってインスリンを出します。 これで、血糖値が下がればいいのですが、下がらなかった場合、そのうちすい臓は疲れてきてインスリンが出にくくなります。 それにより血糖値が上がると、高血糖のために
- すい臓のβ細胞からのインスリンの出が悪くなる
- 筋肉、肝臓などで、インスリンの効き目が悪くなる
ということが起こります。その結果ますます血糖値が高くなり、ますます
- インスリンの出が悪くなる
- インスリンの効きが悪くなる
という悪循環になります。高血糖が悪さをしてどんどん悪循環になるため、このことを「糖毒性」と呼んでいます。 この悪循環をなんとか断ち切らないと血糖値は下がってきません。
「糖毒性」を断ち切るにはインスリン治療が有効
この悪循環を断ち切るのに、インスリン治療は有効です。インスリンを使うと
- インスリンの効果で、血糖値が下がる
- 血糖値が下がると、すい臓のベータ細胞は、ムチ打たれなくなり、休息をとることができる
- すい臓のベータ細胞は、休むことにより、インスリンの出が復活してくることがある。
- 血糖値が下がると、筋肉、肝臓でのインスリンの効き目が良くなる
外から、インスリンを注射することにより、血糖値を下げると、「糖毒性」がなくなり、
- 筋肉や肝臓でのインスリンの効き目が良くなる。
- インスリンの出も良くなる。
というように、良い循環になります。これを「糖毒性を解除する」と呼びます。
血糖値が高いときにインスリン治療を始めたときは、インスリンの使用量は最初は徐々に増えることが多いです。 血糖値が良くなってくると、インスリンの必要量が減ってきます(糖毒性が解除されたということです)。 インスリンを使用し、糖毒性を解除し、インスリンの出が復活し、十分出てくるようになれば、 インスリンをやめることができます。たとえかなり多くのインスリンの量を使っても、 インスリンの出が良くなってくればインスリンはやめられます。逆に、注射しているインスリン量は少なくても、 自分のすい臓からのインスリン分泌が少なければ、インスリンをやめることはできません。
インスリンをやめることはいいこと???
そもそも、インスリンをやめることはいいことなのでしょうか?確かに飲み薬と比べると、インスリンは、 注射をしないといけないので面倒かもしれません。この点はデメリットです。しかし、 インスリンはもともと自分の体から出ているものを注射でうっているので、体にとっては「やさしい」治療です。 飲み薬はもともと体に無いものを飲んでいるのです。
- インスリンを使おうが、
- 飲み薬を使おうが、
- 食事、運動療法だけでやっていこうが、
「血糖を良くしておく」ことが最重要課題です。
注射は痛いという間違った思い込みをしていてインスリン注射を怖がる人もいます。実際は、技術の進歩により、 インスリン注射の針は改良されており、ほとんどの人は注射していることさえも感じないほどです。血液検査のときの針とは、 比べ物にならないほど細い針です。血液検査はどう考えても「痛い」と思います。
インスリンはくせにはならない
くり返しになりますが、インスリンがくせになることはありません。インスリンをやめられるかどうかは、 自分のすい臓からインスリンが十分に出ているかどうかによります。血糖値が高い状態が続くと、 「糖毒性」でインスリンの出が悪くなっていることがあります。糖毒性を解除しても、インスリンの出が悪い場合は、 インスリンをやめられないということになります。しかし、これは、インスリンがくせになってやめられないのではなく、 もともと、すい臓からインスリンの出具合が悪いからやめられないのです。
インスリンがくせになるのが怖い
という理由で、インスリン治療を怖がらないようにしましょう。
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1つ質問させてください。
>2型糖尿病でインスリンを使うケースはいろいろありますが、血糖値が高いことが多いです。血糖値が高くなると、なんとか血糖値を下げようと、すい臓のβ細胞はムチ打たれ、がんばってインスリンを出します。これで、血糖値が下がればいいのですが、下がらなかった場合、そのうちすい臓は疲れてきてインスリンが出にくくなります。
とありますが、そもそもどうして血糖値が下がらないことがあるのでしょうか?それは筋肉や肝臓でインスリンの効き目が悪くなったからでしょうか?
そうだとすると、「血糖値が高いからインスリンの効き目が悪くなる」のではなく、「インスリンの効き目が悪くなったから血糖値が高くなった」のでは?と思ったのですがどうなのでしょう。
血糖値が下がったからインスリンの効き目が良くなる、というところがよく分かりません。反対にインスリンの効き目がよくなったから血糖値が下がった、というのならよく分かるのですが・・・
お時間のあるときで構いませんのでよろしくお願いします。
>そもそもどうして血糖値が下がらないのか?
血糖が下がらない原因は、
1.筋肉や肝臓でインスリンの効き目が悪い場合。
2.β細胞ががんばっても、血糖値を下げるほどにはインスリンが出ない場合
の両方があります。どちらか一方というよりは、2型糖尿病の方は、この両方が重なって、血糖が下がらなくなります。
>血糖値が下がったからインスリンの効き目が良くなる、というところがよく分かりません。
血糖値が高い状態が続くと、インスリンが効きにくくなります。たとえ、インスリンが効きにくい状態でも、インスリンを注射して、より多くのインスリンが体内にあれば、血糖値は下がります。血糖値が下がると、インスリンの効き目も良くなり、ますます血糖値が下がってきます。
実際に、高血糖が長く続いた方に、インスリン治療を始めると、最初のうちはどんどんインスリン量が増えていくことが多いです。しかし、インスリン量を増やし、血糖値が下がってくると、今度はどんどん必要なインスリン量が減ってくることがあります。インスリンを減らすのが遅れると、低血糖になるぐらいです。インスリンの効き目が良くなったから血糖値が下がったというよりは、インスリンの効き目が悪くても、それを補うぐらい多くのインスリンを使うと、血糖値が下がり、血糖値が下がるとインスリンの効き目が良くなり、必要なインスリン量が減るというかんじです。
しかし、
血糖値が下がる
↓
インスリンの効き目が良くなる。インスリンの出もよくなる。
↓
ますます血糖値が下がる。
と考えると、どちらが先かというよりは、ある時点からは、同時進行なのかもしれません。
はじめまして、パンダと申します。たまたま立ちよってすごく勉強になりました。ところで質問なのですが、糖毒性ってよく聞きますが、これってインスリンを使って血糖を下げ始めてからどれくらいで解除されるものなのでしょうか?何を指標として判断するのでしょう?
教えていただけると有難いです。よろしくお願いします。
まず、一つ目の質問の「インスリンを使ってからどのくらいで糖毒性が解除されるか」ですが、人によって異なります。上のコメントで書いたように、高血糖が続いている糖尿病患者さんにインスリン治療をはじめると、最初はだんだんインスリン量が増えていきます。インスリン量を増やし、血糖値が下がってくると、今度はよい血糖値を保つために必要なインスリン量が減ってくることがありますが、このペースが人によって異なります。インスリン治療を始め、良い血糖値になってから、数日から数週間でインスリン必要量がどんどん減る糖尿病患者さんもいらっしゃれば、数ヶ月かけて必要なインスリン量が徐々に減ってくる患者さんもいらっしゃいます。食事療法が乱れていて太っている方、糖尿病歴が短い方は早く糖毒性がとれる印象があります。
2番目の「なにを指標に糖毒性が解除されたと判断するか」ですが、残念ながら、糖毒性そのものを見る指標はないと思います。ただ、糖毒性が解除されたかどうか判断する参考になる指標はあります。一つの指標は、よい血糖値を保つための必要なインスリン量が少なくなっていくことです。これは、インスリンの効き目が良くなっていることを意味します。もう一つはCペプチドhttp://diabetes.seesaa.net/article/2819883.htmlでインスリンの出を調べる方法http://diabetes.seesaa.net/article/2739114.htmlがあります。ただ、いずれも糖毒性そのものを見るのではなく、インスリンの効き目、自分の膵臓からのインスリンの出具合を調べていることになります。
糖毒性を直接調べられるような検査は、現在のところないと思います。