ある日の診察室で
患者 「今日、朝起きたら、突然、目が見えなくなって・・・」
患者 「すぐに眼科にかかったら、糖尿病のせいだって・・・」
患者 「内科にもかかるように言われて来ました・・・」
医師 「糖尿病っていわれたのは、今回が初めてですか?」
患者 「えぇ、10年ほど前に『糖尿病の気がある』って言われましたけど。」
患者 「糖尿病だって言われたことはないです。」
よく話を聞いてみると、10年前に健康診断で「糖尿病の気がある」と言われ、その後も血糖値が高いことがあったが、なにも症状がないため、そのまま放置していたという。
残念ながら、視力はいくらか戻っても、元に戻ることはないでしょう。
糖尿病 − 放置されやすい病気
厚生労働省の平成14年度糖尿病実態調査報告によると
- 糖尿病が強く疑われる人」は約740万人
- 糖尿病の可能性を否定できない人」は約880万人
で、計約1620万人にものぼります。まさに国民病ですね。
さらに驚くべきことに
「糖尿病が強く疑われる人」のうち治療を受けている人は50.6%
実に半分以上の方は治療を受けていませんでした。 どうして、こんなに治療を受けていない人が多いのでしょうか?
糖尿病は「無症状」のことが多い
糖尿病とは、血糖値が高くなる病気です。症状としては尿が多い(多尿)、 のどが渇いてよく水を飲む(口渇、多飲)、 体がだるく疲れやすいなどが知られています。 しかし、 このような自覚症状を訴えて「私は糖尿病ではないでしょうか」 と心配して検査を受けにいらっしゃる方は少数派です。
たいていは
- 「健康診断で血糖値が高めと言われた。」
- 「健康診断で糖尿病の予備軍といわれた。」
というのは、 糖尿病は早期に症状が出る患者さんは少なく、全く無症状の方が多いからです。 この「無症状」というのが糖尿病の怖いところです。
ほんとに怖いのは合併症1 − 三大合併症
無症状でも、血糖値が少しでも高い状態が続くと、 糖尿病による「合併症」は静かに進行しており、 気づいたときには手遅れになっていることもあります。
糖尿病の合併症で代表的なものが
- 糖尿病による目の病気(糖尿病性網膜症)
- 糖尿病による腎臓の病気(糖尿病性腎症)
- 糖尿病による末梢神経の病気(糖尿病性神経障害)
- 糖尿病性網膜症は成人における失明原因の第1位であり、毎年約3000人が失明しています。
- 糖尿病性腎症は新規人工透析の第1位で毎年約11000人が透析導入となっています。
- 糖尿病性神経障害により手足のしびれや痛み、感覚が鈍くなる、下痢や便秘、ED(勃起障害)などが起こってしまいます。
ほんとに怖いのは合併症2 − 動脈硬化症
糖尿病は小さな血管だけではなく、大きな血管にもダメージを与えます。いわゆる「動脈硬化症」です。
- 心臓の血管がダメージを受けると狭心症や心筋梗塞になります
- 頭の血管がダメージを受けると脳梗塞になります
- 足の血管がダメージを受けると閉塞性動脈硬化症という病気になります
動脈硬化症は、糖尿病でない人にも起こります。この点は、三大合併症とは違う点です。 しかし、糖尿病があると、動脈硬化になりやすく、さらに血圧の高い人、 コレステロールが高い人、タバコを吸う人は、動脈硬化症になりやすくなります。
合併症を防ぐのが目標
糖尿病の治療の目標は、一時的に症状をとることではありません。 三大合併症や動脈硬化が起こったり、悪化するのを防いでいくことが、大きな目標になります。 そのためには、糖尿病の早期発見、早期治療が必要になります。
しかし、残念ながら、先ほど述べましたとおり、「糖尿病が強く疑われる人」のうち、治療を受けている人は 50.6%とされています。実に半分以上の方は、治療を受けていないことになります。
健康診断で
- 「血糖値が高め」
- 「糖尿病の気がある」
- 「糖尿病予備軍」
などと いわれた方は、ぜひ医療機関を受診し、検査を受けることをお勧めします。
症状がある人は、すぐに医療機関受診をお勧めしますが、「症状が無いから大丈夫」、「今まで糖尿病を放っておいても大丈夫だからこれからも大丈夫」 ってことは決してありません!
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