2005年10月30日

インスリン4回または5回注射

基礎分泌と追加分泌を別々に補う方法で、1型糖尿病患者さんはもちろんのこと、2型糖尿病患者さんにも適している方法です。

  • 就寝前に、または、就寝前と朝に、中間型インスリンまたは持効型インスリンを注射して、基礎分泌を補います。
  • 各食事の前に、速効型インスリンまたは超速効型インスリンを注射して、追加分泌を補います。

まずは、基礎分泌の補充と追加分泌の補充に別々に分けて、説明したいと思います。

基礎分泌の補充

1)中間型インスリンを使う場合

就寝前に1回注射の場合

N1.png

朝、就寝前2回注射の場合

N2.png

中間型インスリンは、インスリンの作用にピークがあります。また、24時間は充分に効きません。したがって、自分のすい臓からのインスリンの出がほとんどない場合には、1日2回以上中間型インスリンを注射したほうが、血糖値が安定します。

2)持効型インスリンを使う場合

中間型インスリンと比べると、インスリン作用にピークがありません。また24時間、効果が持続します。基本的には、1日1回の注射で基礎分泌を補うことができますが、1日2回注射のほうが血糖値が安定することがあります。

G1.png

追加分泌の補充

1)速効型インスリンを使う場合

R3.png

2)超速効型インスリンを使う場合

Q3.png

速効型インスリンは食事の30分前に、超速効型インスリンは食事の直前に注射します。速効型インスリンと超速効型インスリンの違いについては、インスリン製剤もご覧ください。

速効型インスリンでは、お互い重なっているところがあるのに対して、超速効型インスリンでは重なっているところがありません。

では、いよいよ、基礎分泌と追加分泌の補充を組み合わせてみましょう。

基礎分泌の補充 + 追加分泌の補充

基礎分泌の補充と追加分泌の補充を組み合わせて、健常人のインスリン分泌に近づけるようにします。組み合わせ方はいろいろあります。代表的な例を挙げてみます。

まず、健常人のインスリン分泌を確認しておきましょう。(詳しくは、糖の動きをご覧ください。)

健常人のインスリン分泌と血糖値の関係

glufig2-2.gif

それでは、代表的な注射の仕方を説明します。

1)速効型インスリン3回 + 中間型インスリン1回

R3N1.png

2型糖尿病、1型糖尿病の方にも良く使う方法です。中間型インスリンを朝にも注射するとインスリンの基礎分泌がより安定します。その方法が、次の2)の方法です。

2)速効型インスリン3回 + 中間型インスリン2回

R3N2.png

1)の方法と比べると、基礎分泌の補充が安定してきます。

3)超速効型インスリン3回 + 中間型インスリン1回

Q3N1.png

1)の方法の速効型インスリンを超速効型インスリンに変えたものです。速効型インスリンと異なり、超速効型インスリンはお互いに重なりがありません。この重なっていない時間帯で、血糖値が不安定になる可能性があります。自分の体からインスリンがほとんど出ていない方は注意が必要です。

4)超速効型インスリン3回 + 中間型インスリン2回

Q3N2.png

3)の方法では、超速効型インスリンが重なっていない部分が問題となる可能性があります。それを補うために、中間型インスリンを朝にも注射して、基礎分泌の補充を安定させる方法です。

5)速効型インスリン3回 + 持効型インスリン1-2回

R3G1.png

1)の方法で、基礎分泌の補充を、持効型インスリンにした方法です。中間型1階注射に比べると基礎分泌の補充が安定しています。

6)超速効型インスリン3回 + 持効型インスリン1-2回

Q3G1.png

5)の方法の、追加分泌を超速効型に変えた方法です。

どの注射法がベストか

どの注射法が一番良いか悪いかは一概には言えません。今のインスリン注射で血糖コントロールがよければいいのです。ただ、5,6のインスリンの使い方が、より良好でより安定した血糖コントロールが得られることが多いです。

ここにはあげていませんが、追加分泌の補充に速効型と超速効型を併用することもあります。

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2005年10月24日

インスリン注射器

インスリン治療については、インスリン治療の適応インスリン製剤の種類インスリンの注射パターンで説明してきました。 まだ、インスリンをどのように注射するかについては説明していませんでした。

インスリン注射の方法と器具

注射というと、病院などで採血をするときの注射器を想像する方もいるかもしれません。また、インフルエンザなどの予防接種などを想像する方もいらっしゃるかもしれません。

インスリンの注射器は進歩していて、現在では、簡単な操作で注射できるペン型やキット製剤が主流になっています。普通の注射器と異なり、慣れれば、簡単に注射をすることができます。また、注射の針も非常に細くて、ほとんど痛みを感じずに、注射ができます。採血や予防接種の時の注射のような痛みはありません。

インスリンの注射法に関しては、インスリン製剤を出している、イーライリリーノボ ノルディスク ファーマのホームページが参考になると思います。この2社のインスリン注射器の使い方は似ている点が多いです。

(このほか日本では、アベンティスが持効型インスリンのランタスを出しています。ランタスはインスリン自体は良いものです。ランタスの注射器は残念ながらあまり評判が良くなく、いろいろな問題も出ています。今回は、この注射器については、説明を省略いたします。)

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2005年10月16日

インスリンの注射パターン

インスリンの代表的な注射のパターンについて説明したいと思います。それぞれのインスリン製剤の特長についてはインスリン製剤の種類をご覧ください。追加分泌、基礎分泌についても、インスリン製剤の種類をご覧ください。

1. インスリン4回または5回注射
  • 速効型または超速効型インスリンを各食前に注射して、追加分泌を補充します。
  • 中間型または持効型インスリンを1日1-2回注射して、基礎分泌を補充します。
この注射の仕方は、ここにあげた方法の中では、健常者のインスリン分泌に一番近づけることができます。1型糖尿病患者さんにとっては、望ましいインスリン投与法の代表です。2型糖尿病患者さんにとっても良いインスリン投与法です。
2. インスリン2回注射
混合型インスリン、または二相性インスリンアナログを朝食前と夕食前に注射する方法です。インスリン4-5回注射に比べると、健常人のインスリン分泌パターンから離れてしまいます。しかし、自分のすい臓からある程度インスリンの出ている方では、良好な血糖コントロールが得られることがあります。中間型インスリンを2回注射する方法もあります。
3. インスリン3回注射
各食前に、速効型または超速効型インスリンを注射する方法です。インスリンの基礎分泌が保たれている糖尿病患者さんに適している方法です。食後の血糖値を抑えることができます。また、血糖値を上げる作用のあるステロイドを他の病気で使うときに、この方法を使うことがあります。ステロイドを使うときには朝に中間型インスリンを注射して、1日4回注射をすることもあります。

そのほかにも、インスリンの注射の仕方はいろいろあります。いずれの注射の仕方にしても、低血糖がなるべく少なく、良好な血糖コントロールが得られれば良いのです。

それぞれの注射のパターンについては、今後、もう少し詳しく説明していきます。

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2005年10月11日

食事療法を続けるとやせる?

医師から指示された食事療法を守ると、どんどん体重がやせてしまって心配という方が、ときどきいらっしゃいます。医師が指示する食事のカロリーについて、今回は考えてみたいと思います。

2型糖尿病の治療の基本は、食事療法、運動療法です。食事療法は、1400kcal、1600kcal、1800kcalなど、具体的な指示を受けることが多いと思います。この指示カロリーは、ほとんどは、 食事療法の基本で説明した方法で求めることが多いです。簡単に説明しますと、

  1. 身長から標準体重を求めます。
  2. 身体活動量(体をどのくらい動かすか)を、予測します。
  3. 標準体重と身体活動量から、指示カロリーを求めます。

詳しくは、食事療法の基本を参考にしてください。そこでも説明しましたように、これはあくまでも摂取カロリーの目安です。身長と身体活動量(の予想)だけで、適切な摂取カロリーがわかるとは限りません。したがって、このカロリーが理想とは限りません。経過をみて、指示カロリーを変更する必要も出てきます。

  • 摂取カロリーを守ってもどんどん太るのであれば、さらに摂取カロリーを減らす必要があるかもしれません。
  • 摂取カロリーを守って、どんどん痩せていくのであれば、摂取カロリーを増やす必要があるかもしれません。ただし、血糖値が悪いときにやせるのは、摂取カロリーが足りないからではありません。血糖コントロールが悪いから、やせてしまうのです。

医師から受けた指示カロリーは、一生不変な絶対的なカロリーではありません。年齢、肥満の有無、体重の推移、合併症の有無により変更する必要があります。肥満があっても、あまりにも早くやせる必要はありません。もともとやせている方、または標準体重に近い方はやせる必要はないケースがほとんどです。現状維持が目標になります。

指示カロリーに不安があるときは、主治医に相談してみましょう。

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2005年10月08日

インスリン製剤の種類

インスリン製剤の種類

インスリンを注射してから、インスリンの効果が発現するまでの時間、効果が続いている時間により、インスリン製剤を分類することができます。

  1. 超速効型インスリン
  2. 速効型インスリン
  3. 中間型インスリン
  4. 持効型インスリン

現在のところ、4種類があります。

さらに、速効型インスリンと中間型インスリンが一定の割合でまぜっている

  • 混合型インスリン

超速効型インスリンの一部を結晶化して部分的に中間型の成分にした

  • 二相性インスリンアナログ

があります。

健常人のインスリン分泌

健常人のインスリン分泌は、

  • 基礎分泌
  • 追加分泌

に分けて考えることができます。(詳しくは、糖の動きをご覧ください。)

健常人のインスリン分泌と血糖値

glufig2.gif

  • 基礎分泌を補うのが、中間型インスリン、持効型インスリンです。
  • 追加分泌を補うのが、超速効型インスリン、速効型インスリンです。
  • 基礎分泌、追加分泌をまとめて補うのが、混合型インスリンです。
商品名 発現時間
(効果が出るまでの時間)
最大作用時間 持続時間 主な使用目的
超速効型 ノボラピッド
ヒューマログ
15分以内 0.5−2時間 3-5時間 追加分泌を補う
速効型 ペンフィルR
ヒューマカートR
約30分 1-3時間 5-8時間 追加分泌を補う
中間型 ペンフィルN
ヒューマカートN
1-2時間 4-12時間 18-24時間 基礎分泌を補う
持効型 ランタス 1-2時間 ピークなし 約24時間 基礎分泌を補う

insulin.gif

インスリン製剤の特徴

速効型インスリン

追加分泌を補うためのインスリンです。注射をしてから、効果が出るまで、30分かかるので、食事の30分前に注射します。注射をしてから30分待って、食事を始めるのが理想ですが、実際は30分待っていない方が多いといわれています。健常人の追加分泌と比較すると、速効型インスリンは立ち上がりが悪く、効果が長く続いてしまいます。そこで、立ち上がりが良く、効果が短くなり、より健常人の追加分泌に近くなるように開発されたのが超速効型インスリンです。

超速効型インスリン

速効型インスリンと同じように、追加分泌を補うためのインスリンです。速効型インスリンと比べると、注射をしてから効果が出るまでの時間が短いため、食事の直前に注射します。速効型インスリンと比べると、効果が切れるのも早くなります。(ヒトインスリンの一部のアミノ酸を変えて作られています。インスリンアナログと呼ばれています。)

中間型インスリン

基礎分泌を補うためのインスリンです。注射する時間と食事時間との関係はあまり重要ではありません。健常人の基礎分泌と比べると、インスリン作用が24時間安定はしていなくて、ピークがあります。1日1-2回(3回以上のこともあります)注射して、基礎分泌を補います。

持効型インスリン

中間型インスリンと同じように、基礎分泌を補うためのインスリンです。中間型インスリンと比べると、約24時間安定して効果を発揮し、ピークがありません。1日1-2回注射して、基礎分泌を補います。(ヒトインスリンの一部のアミノ酸を変えて作られています。インスリンアナログと呼ばれています。)

混合型インスリン

速効型インスリンと中間型インスリンが一定の割合で混ざっています。

  • ペンフィル10Rは速効型インスリンが10%、中間型インスリンが90%混ざっています。
  • ペンフィル20Rは速効型インスリンが20%、中間型インスリンが80%混ざっています。
  • ペンフィル30Rは速効型インスリンが30%、中間型インスリンが70%混ざっています。
  • ペンフィル40Rは速効型インスリンが40%、中間型インスリンが60%混ざっています。
  • ペンフィル50Rは速効型インスリンが50%、中間型インスリンが50%混ざっています。
  • ヒューマカート3/7は速効型インスリンが30%、中間型インスリンが70%混ざっています。
二相性インスリンアナログ製剤

超速効型インスリンの一部を結晶化して部分的に中間型の成分にしたインスリン製剤です。超速効型インスリンと中間型インスリンが一定の割合で混ざっていると考えて問題ありません。

  • ノボラピッド30ミックスは超速効型インスリン30%、中間型の成分が70%混ざっています。
  • ヒューマログミックス25は超速効型インスリン25%、中間型の成分が75%混ざっています。
  • ヒューマログミックス50は超速効型インスリン50%、中間型の成分が50%混ざっています。

これらのインスリン製剤をどのように使って、血糖コントロールをするかについてはまた説明したいと思います。

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2005年10月01日

インスリン治療の適応

しばらく更新をお休みしていました。また、少しずつ更新していきたいと思います。

まずは、インスリン治療について話を進めていきたいと思います。インスリン治療については、 インスリンはくせになる??糖毒性の解除で少し説明しました。インスリン治療はさまざまなケースで用いることがあります。

インスリン依存状態
自分のすい臓からインスリンがほとんど、または、まったく出ていない場合です。このような場合には、インスリン治療が必須になります。
糖尿病性ケトアシドーシス、高血糖性高浸透圧性昏睡
難しい言葉ばかりです。それぞれについてまた機会がありましたら説明します。簡単にいうと、糖尿病の状態が悪く、血糖値が非常に高い状態です。このような場合は、飲み薬ではなく、効果が確実なインスリンを使用します。
重症感染症、手術など
肺炎などの感染症を起こすと、血糖値が高くなります。また、血糖値が高いと感染症は治りにくくなります。手術などストレスがかかっているときも、血糖値は高くなります。血糖値が高いまま続くと、手術後の経過が悪くなることがあります。このような場合は、インスリンで血糖値を良い値に保つことが重要です。
重症な肝障害、腎障害のとき
肝臓や腎臓が悪いときに、血糖を下げるお薬を飲むと、予想以上に薬が効いて低血糖になったり、薬の副作用が出やすくなったりします。このような場合には、インスリンを使用します。インスリンはもともと自分の体にあるものなので、体にとって「やさしい」のです。
妊娠時の糖尿病
妊娠時に、食事療法、運動療法で血糖値が十分に下がらない場合には、インスリンを使用します。 
非常に血糖値が高いとき
血糖値が高いときは、飲み薬が効きにくくなっています(糖毒性の解除も参考してください)。このような時は、効果が確実なインスリンを使用します。
糖尿病の飲み薬で十分に血糖値が下がらない場合

以上のように、インスリンはさまざまなケースで用います。

今後、インスリン製剤の種類、インスリン製剤の特徴、インスリン注射の実際などについて説明していきます。

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