2005年04月29日

αグルコシダーゼ阻害薬

糖質の消化・吸収を遅らせて、食後の高血糖をおさえるお薬です。食事の直前に飲むと、食後の血糖の上がりが緩やかになります。

αグルコシダーゼ阻害薬の種類

一般名 商品名 1錠中の含有量(mg) 1日の使用量(mg)
アカルボース グルコバイ 50, 100 150-300
ボグリボース ベイスン 0.2, 0.3 0.6-0.9

一般名と商品名については、SU剤の表の下の説明を参照してください。

αグルコシダーゼ阻害薬の作用

食後の血糖値を抑える

炭水化物(糖質)は、小腸の粘膜にあるαグルコシダーゼという酵素の働きで、ブドウ糖などの単糖類に分解されて、小腸から吸収されます。αグルコシダーゼ阻害薬は、このαグルコシダーゼの働きを抑える薬です。それにより、炭水化物を食べたとき、炭水化物の吸収がゆっくりとなり、食後に血糖値が上がるのを抑えることができます。

空腹時(朝食前)の血糖値があまり高くなくて、食後の血糖値が高い方に適しています。また、他の糖尿病治療薬、インスリンとも相性がいいため、他の薬と一緒に使うことが多い薬です。

糖尿病の予防効果

STOP-NIDDMという研究で、αグルコシダーゼ阻害薬のグルコバイが、耐糖能異常(境界型)から2型糖尿病への悪化を抑制したと報告されています。グルコバイにより本当に糖尿病の発症を抑えられたのか、単に糖尿病の発症を遅らせているだけなのかは議論のあるところです。また、日本では(保険上)、糖尿病以外の方には、グルコバイの投与は認められていません。

αグルコシダーゼ阻害薬を飲むときの注意点

食直前に服用を

この薬は、薬を飲むタイミングが重要なお薬です。食事の直前に飲むと、食後の血糖を良く抑えることができます。食事30分前や食後では、あまり効きません。食事の直前に飲むというのがこのお薬のポイントです。

おなかがはる、おならが増えるなどの副作用

αグルコシダーゼ阻害薬により、吸収がおさえられた炭水化物は、一部は大腸まで達して、腸内細菌により発酵されてから吸収されます。腸内で発酵が起こると、腸内ガスが発生します。そのため、このお薬を飲むと、おなかがはったり、おならが増えることがよくあります。また、下痢気味になったり、便秘気味になることもあります。おなかがはったり、おならが増えたりする副作用は、程度の差はありますが、ほとんどの方にが出ます。2,3ヶ月飲んでいると、徐々に症状が治まってくることが多いです。

おなかがはったり、おならが増えるため、飲むのをやめてしまう人が多い薬でもあります。患者さんにお話を聞くと

  • 「実は飲んでいません」
  • 「お薬がかなり余っています」

という方が多いです。食事の前に飲むお薬なので忘れやすいということもあると思いますが、おなかの症状のために、やめたり、減らしたりしている方も多いです。しかし、炭水化物の吸収をゆっくりにするという、他の薬にはみられない作用があるため、良く使われるお薬です。また、太りにくいお薬でもあり、良いお薬です。少ない量から初めて、徐々に薬に慣れると良いです。

おなかの手術を受けたことのある人、腸閉塞になったことのある人は、この薬により腸閉塞になる可能性があるため、注意が必要です。

低血糖のときはかならずブドウ糖を!!

このお薬だけで、低血糖になることはまずありません。αグルコシダーゼ阻害薬は、他の糖尿病治療薬やインスリンとも相性の良いお薬です。経口血糖降下薬やインスリンと、αグルコシダーゼ阻害薬を一緒に使っているときに、低血糖を起こすことがあります。その時には、必ずブドウ糖をとるようにしましょう。αグルコシダーゼ阻害薬は、糖質の分解を抑えて糖質の吸収を遅らせるお薬なので、お砂糖などをとってもすぐに血糖値は上がりません。ブドウ糖であれば、分解されずそのまますぐに吸収されるので、問題ありません。

αグルコシダーゼ阻害薬を飲んでいるときの低血糖には、必ずブドウ糖を使うようにしましょう。低血糖の説明も、ぜひ読んでください。

肝機能障害

重篤な肝機能障害の報告があります。定期的な肝機能検査が必要です。重篤な肝機能障害が起こる頻度は非常に低いです。

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2005年04月26日

血糖値の悪くなる時期

年末年始

年末、お正月は、血糖値が悪くなる方が多いです。どうしても、食事が多くなったり、運動不足になってしまうからでしょう。体重がかなり増えてしまう方もいらっしゃいます。これは、べつに、糖尿病患者さんに限った話ではないでしょう。

年度末

お仕事をしている方は、3月は忙しい時期のためか、食事が乱れたり、お薬を飲み忘れたり、お薬が切れたりして、血糖値が悪くなる方がいらっしゃいます。私は、この時期は、あまり忙しくはないので、実感はあまりわきませんが、お仕事によってはかなり大変な時期のようですね。

花粉症

今年は、スギ花粉量が多く、花粉症で苦しんだ方も多かったと思います。「花粉症で、外出する気になれず、運動があまりできなかった」という話を聞くことが、今年は多かったです。花粉症で運動不足になり、血糖値が悪くなってしまいます。その他にも、花粉症は血糖値をあげる原因になることがあります。花粉症を抑えるために、ステロイドの注射やステロイドが入っている飲み薬を飲んでいる場合です。ステロイドには、血糖値をあげる副作用があるので、糖尿病の方が使うときは注意が必要です。花粉症のときに、本当にステロイドを使う必要があるのか、メリットとデメリットを考える必要があります。ステロイド点鼻薬は、血糖に与える影響が少ないです。まずは、ステロイドが入っていない抗アレルギー薬、目薬、点鼻薬を使うのが良いと思います。それでも症状がひどければ、ステロイドの点鼻薬を使うのが良いです。いずれにしても、そろそろ、花粉症も落ち着く時期なので、花粉症の方はうれしいですね。私も花粉症ですが、早く花粉症シーズンが過ぎてほしいです。

1年365日、毎日毎日、食事療法・運動療法・薬物療法を完璧にこなすことは困難だと思います。完璧を目指すと、ストレスも多くなりますし、うまくいかないとき投げ出したくもなると思います。特に、食事・運動に関しては、あまり無理な目標を立てず、達成できそうな目標を立てて、まずは、その目標を目指すようにしましょう。

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2005年04月23日

チアゾリジン誘導体

インスリン抵抗性を改善して、血糖値を下げるお薬です。

チアゾリジン誘導体の種類

一般名 商品名 1錠中の含有量 1日の使用量
塩酸ピオグリタゾン アクトス 15, 30 30

一般名と商品名については、SU剤の表の下の説明を参照してください。

チアゾリジン誘導体の作用

インスリン抵抗性を改善して(インスリンの効き目を良くして)、血糖値を下げるお薬です。正確な作用機序は、研究が進んでいるところです。

今までにわかっている作用機序を少しだけ解説します(興味のある方だけ、読んでいただければ大丈夫です)。難しい話になりますが、チアゾリジン誘導体はPPARγという核内受容体のアゴニスト(刺激する薬)です。主には、脂肪細胞に働きますが、筋肉、肝臓を含めて全身に作用します。

  • チアゾリジン誘導体は、脂肪細胞において、脂肪酸の取り込みに必要な蛋白質を増やします。それにより、脂肪酸が脂肪組織に集まるようになり、筋肉や肝臓に取り込まれる脂肪酸が減ります。筋肉や肝臓に脂肪酸がたまらなくなるため、インスリンの効き目が良くなります(筋肉や肝臓に脂肪酸がたまるとインスリンの効き目が悪くなります)。
  • 脂肪細胞には、中性脂肪を貯めこんだ大きな細胞と、あまり貯めこんでいない小型の細胞があります。脂肪細胞は、さまざまな物質(アディポサイトカイン)を出しています。大きな脂肪細胞からは、インスリンの効き目を悪くするようなアディポサイトカインが多く出ています。小型の脂肪細胞からはインスリンの効き目を良くするアディポサイトカインが多く出ていて、インスリンの効き目を悪くするアディポサイトカインはあまり出ていません。チアゾリジン誘導体は、小型の脂肪細胞を増やして、大きな脂肪細胞を減らす働きをしています。それにより、インスリン抵抗性を良くするアディポサイトカインが増えて、インスリン抵抗性を悪くするアディポサイトカインが減ります。それにより、インスリン抵抗性が改善します。

以上のような機序で、インスリン抵抗性を良くしていると考えられていますが、まだまだ研究中のお話です。

チアゾリジン誘導体を飲むときの注意点

浮腫

副作用として、むくみがあります。特に、女性でむくむことが多いです。女性では、少ない量(15mg)からお薬を始めることが勧められています。心不全の方は、病状が悪化する可能性があるので、使用しません。

体重増加

体重が増加することが多い薬です。一つの原因としては、むくみによる体重増加があります。食欲が増える可能性も否定できません。食事療法を守れている人は、体重が増加しにくいです。

肝機能障害

チアゾリジン誘導体のトログリタゾン(ノスカール)というお薬は、重篤な肝機能障害を起こしたため、販売中止となっています。ピオグリタゾン(アクトス)では、肝機能障害の発症率は低いことがわかっていますが、定期的な肝機能の検査が必要です。また、B型肝炎、C型肝炎の方には使用しません。

低血糖

このお薬だけでは低血糖を起こすことはほとんどありません。他の経口血糖降下薬、インスリンを使っている場合には、低血糖の対策が必要です。

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2005年04月19日

速効型インスリン分泌促進薬

SU剤と同じように、インスリンの分泌(出)を良くするお薬です。薬を飲むとすぐに効果が現れ、数時間以内に効果がなくなります。食事の直前に飲むことにより、食後の血糖値を下げるお薬です。

速効型インスリン分泌促進薬の種類

一般名 商品名 1錠中の含有量(mg) 1日の使用量(mg)
ナテグリニド スターシス
ファスティック
30, 90 270
ミチグリニドカルシウム水和物 グルファスト 5, 10 30

一般名と商品名については、SU剤の表の下の説明を参照してください。

速効型インスリン分泌促進薬の作用

速効型インスリン分泌促進薬は、SU剤と同じように、インスリンの分泌(出)を良くして、血糖値を下げる薬です。SU剤は、ゆっくりと長く効き、一日の血糖値を全体的に下げる薬です。それに対して、速効型インスリン分泌促進薬は、お薬を飲むとすぐに、すい臓に効いて、すい臓からインスリンが出ます。効き目が切れるのも早いです。

したがって、食事の直前(30分前ではなく)に飲むと、食後の血糖値を下げることができます。食事30分前に飲むと、食事までの間に血糖値が下がり、低血糖を起こす可能性があります。必ず、食直前に飲むようにしてください。

SU剤と比べると、血糖値を下げる作用は弱いです。また、主に食後の血糖値しか下げません。したがって、空腹時(朝食前の)血糖値はあまり高くなくて、食後の血糖値が高い人に、適している薬です。SU剤と一緒に飲んでも効果はほとんどなく、一緒に飲むことは認められていません。

速効型インスリン分泌促進薬を飲むときの注意点

くり返しになりますが、食直前に飲むようにします。食事30分前に飲むと低血糖になる可能性があり、食後に飲むと薬がうまく吸収されず、十分な効果が出ません。食直前に飲み忘れた場合は、その1回分は抜かしましょう(忘れない工夫も大切です)。

副作用としては、低血糖がありますが、SU剤と比べると起こりにくいです。また、お薬が効いている時間も短いため、低血糖が長く続くこともあまりありません。しかし、肝臓、腎臓の悪い人は低血糖を起こしたり、低血糖が長く続く可能性があります。透析を必要とするような腎傷害のある人は、この薬を飲んではいけません。

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2005年04月16日

スルホニル尿素薬、SU剤

糖尿病の飲み薬にはさまざまな種類のお薬があります。その中でも、スルホニル尿素薬は古くから糖尿病の治療に使われている薬です。また、血糖値を下げる作用が強いお薬です。スルホニル尿素薬は、SU(エス・ユー)剤と呼ばれることが多いです。

スルホニル尿素(SU, sulfonylurea)薬の種類

一般名 商品名 1錠中の含有量(mg) 1日の使用量(mg)
第一世代 トルブタミド ラスチノン
ジアベン
250, 500 250 - 1500
アセトヘキサミド ジメリン 250, 500 250 - 500
クロルプロバミド アベマイド 250 100 - 500
トラザミド トリナーゼ 100, 250 100 -300
グリクロピラミド デアメリンS 250 250 - 500
グリブゾール グルデアーゼ 125, 250 125 - 500
第二世代 グリベンクラミド オイグルコン
ダオニール
1.25, 2.5 1.25 - 7.5
グリクラジド グリミクロン 40 40 - 120
第三世代 グリメピリド アマリール 1, 3 1- 6

ここで、一般名というのは、主に専門的に薬を扱う場合に使う名前です。一つの薬に対して、基本的に一つの一般名しかありません。一方、商品名とは、製薬会社などがつけた商品の名前です。同じお薬でも、作る製薬会社により名前が違うことがあります。上の例で言えば、第二世代のグリベンクラミド(一般名)は、製薬会社によりオイグルコン、ダオニールと商品名は異なりますが、含まれている薬の成分は同じです。

表にあげたとおり、非常に多くの薬がありますが、実際よく使われているのは第二世代、第三世代の薬です。第一世代の薬では、ラスチノン、ジアベンは使用することもありますが、他の薬はあまり使用することはないと思います。

スルホニル尿素薬の作用

すい臓のベータ細胞に働きかけて、インスリンの分泌(出)をよくする薬です。血糖値を下がる作用は、糖尿病の飲み薬の中では強いお薬です。しかし、もともと、自分のすい臓からまったくインスリンが出ていない人には効きません。

スルホニル尿素薬は、一日の血糖を全体的に下げます。1日1回または1日2回(朝、夕)で飲むことが多いです。お薬が効いている時間は、お薬の種類により違います。効果は徐々に弱くなりますが、数日間ゆっくりと効いていることが多いです。とくに、オイグルコン、ダオニールは効果が長く続きます。

血糖値を下げる作用は、お薬の種類により異なります。だいたいの目安として

  • オイグルコン、ダオニール 1.25mgとアマリール1mgがだいたい同じ効果があります。
  • グリミクロン 40mg錠が1-2錠とアマリール 1mgがおおよそ同じ効果です。

薬の効き具合は人により大きく違うため、少ない量から始めて徐々に増やしていきます。

スルホニル尿素薬を飲むときの注意点

糖尿病の飲み薬に書きましたとおり、お薬が始まったからといって、食事と運動による管理をおろそかにしてはいけません。食事療法がおろそかになっていると、スルホニル尿素薬により太ってしまいます。太るとお薬が効きづらくなり、血糖値が上がり、さらにお薬を増やすという悪循環になる可能性があります。

スルホニル尿素薬のもっとも注意しなければならないのは、血糖が下がりすぎること(低血糖)です。少量でも、血糖値が下がることがあるので注意が必要です。また、スルホニル尿素薬の低血糖は、長く続いたり、いったん血糖値が上がっても、再び、低血糖になることがあります。低血糖についての説明もぜひ読んでください。肝臓の悪い方、腎臓の悪い方、高齢の方は低血糖がより長く続く可能性があります。

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2005年04月15日

低血糖とは

糖尿病のお薬の話を進める前に、低血糖の話をしておきたいと思います。インスリン治療や糖尿病の飲み薬を使っている方には、低血糖が起こる可能性があるからです。

低血糖の症状

血糖値が下がり始めると、体は血糖値をなんとか上げようとして、血糖値を上げるホルモンを出します。血糖値を上げるホルモンにはグルカゴン、カテコールアミン、成長ホルモン、副腎皮質ホルモンなどがあります。

  1. カテコールアミンが出ることにより、発汗、動悸(胸がどきどきする)、手指が振るえる、不安感などの症状が出ます。これは、警告の症状です。このときに、「まぁ、大丈夫だろう」と放っておかずに、適切な対処をすることが大切です。
  2. このまま、放っておいて、血糖値がさらに下がると、脳の働きが低下してきます。そのため、目のかすみ、眠気、生あくびなどの症状が出ます。
  3. さらに血糖値が下がると、意識が悪くり、意識を失ってしまいます。けいれんがおこることもあります。

1の症状は、体がなんとか血糖値をあげようとしている反応です。このときに適切な対処をすれば、大きな問題はありません。どの症状が出るかは、個人差があります。同じ人では、だいたい同じ症状が出ることが多いです。自分の症状を覚えておくようにしましょう。

2,3は、脳が十分に機能できなくなり、出てくる症状です。脳は必要なエネルギーのほとんどをブドウ糖に頼っています。したがって、血糖値が下がると脳が十分働かなくなるのです。

血糖値がいくつなら、低血糖?

では、どのくらいの血糖値になると、低血糖症状が出るのでしょうか?おおよその目安として、血糖値が60-70mg/dl以下になると、症状が出ることが多いです。しかし、低血糖症状が出る血糖値は、人により異なります。普段血糖値が高い人は、100mg/dlでも低血糖症状が出ることがあります。逆に、普段血糖値が低い人は、60mg/dlでも低血糖症状が出ないことがあります。また、低血糖を何度も繰り返していると、血糖値が下がっても、発汗、動悸、手指が振るえるなどの症状がないまま、意識が悪くなることがあります。

低血糖への対処

低血糖の症状がでたら、放っておいてはいけません。すぐに対処する必要があります。

血糖値がすぐに測れる状況であれば、血糖値を測ります。本当に血糖値が低いかどうかがわかります。すぐに測れないときは、測る必要はありません。

意識がはっきりしているときは、ブドウ糖10g程度を摂取します。砂糖の場合は10-20g程度を飲みます。ブドウ糖のほうが、血糖がすぐに回復します。αグルコシダーゼ阻害薬(ベイスン、グルコバイ)を飲んでいるときは、必ずブドウ糖を飲むようにします。ブドウ糖以外では、血糖が回復するのが、遅れてしまいます。普通は5-10分ぐらいで、低血糖の症状がとれます。15分経っても症状がとれない場合は、もう一度、ブドウ糖、砂糖を飲むようにします。

意識がはっきりしていなくて、ブドウ糖、砂糖を飲めない場合は、ブドウ糖、砂糖をくちびると歯ぐきの間に塗って、すぐに医療機関を受診するようにします。そのほかの方法としては、グルカゴンを注射する方法があります。グルカゴンは家族が注射することができますが、医師からの処方、指導が必要です。意識を失っても、早く対処すれば、意識は完全に回復します。

意識が低下するほどの低血糖を起こした場合は、意識が回復しても医療機関の指示を受けることをお勧めします。とくに、飲み薬(その中でもスルホニル尿素薬)で低血糖を起こしたときは、再び低血糖を起こしたり、意識が再び低下する可能性があるため、必ず医療機関で治療を受けるようにします。

低血糖はすぐ対処を

低血糖はすぐに対処しなくてはいけません。その理由はいろいろあります。

  • 放っておくと、意識を失う可能性があります。
  • たとえ意識を失わなかったとしても、血糖値を上げるホルモンが出ることにより、低血糖の反動として、その後、血糖値が急上昇することがあります。
  • 何回も低血糖を繰り返すと、発汗、動悸、手指の震えなどの症状が出にくくなります。

低血糖を放っておくのは危険です。必ず、対処するようにしましょう。また、低血糖にすぐ対処できるように、ブドウ糖、砂糖は常に携帯するようにしましょう。あめ、氷砂糖、チョコレートなどは、ないよりはましですが、血糖値が上がるのに時間がかかってしまいます。砂糖はペットシュガー(袋入りの砂糖)が持ち運びに便利です。

低血糖の予防

低血糖が起こりやすいのは

  • 飲み薬、インスリンの量が多い
  • 食事が遅れた
  • 食事の量が少ない
  • 運動をしている途中
  • 運動をした後

などがあります。低血糖が起こったときは、原因を主治医とともに探して、可能であれば避けるようにしなければいけません。飲み薬、インスリンの量が多いのであれば減らす必要があります。運動すると血糖値が下がるのであれば、運動するときはインスリンの量を減らしたり、補食で対処する方法もあります。主治医と対処法をよく相談するようにしましょう。

低血糖を恐れすぎない

よい血糖値を目指すと、どうしても低血糖を起こしやすくなります。低血糖をあまりに恐れて、血糖値を高めにしていると、合併症が起こりやすくなります。低血糖は適切に対処すれば、怖いものではありません。低血糖の対策をよく身につけて、よい血糖値を目指すようにしましょう。

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2005年04月12日

糖尿病の飲み薬

薬物療法を始めるにあったって

まずは、糖尿病の治療をご覧ください。。そこで説明しました通り、2型糖尿病では、薬物療法を行うときも、食事療法、運動療法が基本です。ときどき、

  • 「お薬を飲んでいるから、もう食事や運動は関係ない」

とおっしゃる方がいますが、そんなことはありません。特に、食事療法が守れないまま、薬物療法を行うと、どんどん太っていくことがあります。とはいうものの、食事療法、運動療法を完璧に行うことは、難しいことです。 食事や運動などの生活習慣を変えるのに何ヶ月も何年も格闘している間に、高血糖が大きな問題を起こす可能性もあります。ある程度、食事療法、運動療法を行っても、目標を達成できないときは、薬物療法を考えたほうがよいです。たとえ少し太ってしまっても、悪い血糖でそのまま過ごすよりはずっといいことで、糖尿病の合併症を防ぐのに役立ちます。

飲み薬とインスリン注射

糖尿病の薬物療法は、大きく、飲み薬とインスリン注射に分けることができます。飲み薬は、以下の5つのグループに分けることができます。

  1. スルホニル尿素(SU, sulfonylurea)薬
  2. 速効型インスリン分泌促進薬
  3. ビグアナイド(BG)薬
  4. α-グルコシダーゼ阻害薬
  5. チアゾリジン誘導体

1.2はインスリンの出を良くさせて、血糖値を下げる薬です。3,4,5はインスリンの出を良くさせるのではなく、それ以外の方法で血糖値を下げる薬です。

糖尿病の治療薬を使うことは、実は食事療法を守ったり、運動する時間を作ったりするよりは簡単なことです。食事療法や運動療法はなかなか守れなくても、内服薬、インスリン注射はしっかりとやっている方もいます。しかし、薬ならではの注意点もあります。

薬を使うにあたって、

  1. その薬は、どのようにして血糖値を下げるのか(薬の作用機序)
  2. 薬を飲むタイミング(糖尿病の薬では飲むタイミングが重要な薬があります)
  3. 薬の副作用、注意点
  4. 低血糖について

を知っておくことは重要です。

代表的な飲み薬

糖尿病の代表的なお薬は、以下のとおりです。少なくとも御自分の飲んでいる薬については、知っておくとよいと思います。それぞれのお薬について、別の記事で詳しく説明してあります。クリックしてご覧ください。

種類 主な薬 主な作用
スルホニル尿素薬
SU剤
(sulfonylurea)
アマリール
オイグルコン
ダオニール
グリミクロン
ラスチノン
ジアベン
インスリンを出させる
薬が効いている時間は長い
速効型インスリン分泌促進薬 スターシス
ファスティック
グルファスト
インスリンを出させる
薬が効いている時間は短い
食事の直前に飲むと、食後の血糖値を抑えることができる
ビグアナイド(BG)薬 メルビン
メデット
グリコラン
ジベトスB
肝臓で糖が作られるのを抑える
α-グルコシダーゼ阻害薬 グルコバイ
ベイスン
糖の消化を抑えて、吸収を遅らせることにより
食後の血糖値を抑える
チアゾリジン誘導体 アクトス インスリンの効き目を良くする

インスリンについては、別にまた説明したいと思います。

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2005年04月10日

メタボリックシンドロームとは

動脈硬化とメタボリックシンドローム

動脈硬化とは、血管が狭くなったり、つまったりして、血液がスムーズに流れなくなる病気です。糖尿病を放置しないで!境界型とはでお話したとおり、動脈硬化により、狭心症・心筋梗塞、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症という病気になります。動脈硬化は、

  • 境界型を含む糖尿病
  • 高脂血症(コレステロール、中性脂肪が高い)
  • 高血圧
  • 肥満
  • 喫煙

により、起こりやすくなります。これらの異常は、それぞれの程度が軽くても複数が重なると非常に危険で、動脈硬化につながりやすいことがわかっています。

これらの病気の重複は単に偶然に重なるのでなく、比較的共通の病態が根底に存在すると考えられています。その病態として特にインスリン抵抗性、内蔵肥満などが注目されており、研究が進んでいます。

これらの病気の重複は以前より注目されており、1988年にReavenが「シンドロームX」として提唱し、その翌年、Kaplanが上半身肥満に重点を置いて「死の四重奏」を提唱しました。同様に、DeFronzoらは「インスリン抵抗性症候群」と名づけ、最近では、メタボリックシンドローム(metabolic syndrome)と呼ばれています。メタボリック症候群、代謝症候群と呼ばれることもあります。

メタボリックシンドロームを診断するには

メタボリックシンドロームの診断は、

  • 内臓脂肪の蓄積
  • 脂質の異常
  • 高血圧
  • 境界型を含む糖尿病

などを組み合わせて診断します。WHOやNCEP(National Cholesterol Education Program)などから診断基準が発表されています。WHOの診断基準は、境界型を含む糖尿病に重きを置いており、NCEPの基準は、脂質の異常に重きを置いたものでした。これまで日本では診断基準がありませんでした。

日本でのメタボリックシンドロームの診断基準

日本でも診断基準の策定が進み、2005年4月8日に日本内科学会で、日本においてのメタボリック症候群の診断基準が発表されました。

メタボリックシンドロームの診断基準

必須 内臓脂肪蓄積
ウエストサイズが
男性 : 85cm以上
女性 : 90cm以上
(内臓脂肪面積≧100cm2に相当)
上記に加えて、以下の二項目以上
1 中性脂肪 : 150mg/dl以上
かつ/または
HDLコレステロール : 40mg/dl未満
(善玉コレステロール)
2 収縮期血圧:130mmHg以上
かつ/または
拡張期血圧:85mmHg以上
3 空腹時血糖値:110mg/dl以上

ウエストサイズ = 内臓脂肪の蓄積

日本の診断基準で、注目すべき点はウエストサイズが必須の項目としてあげられているところです。WHOの診断基準でも、NCEPの診断基準でもウエストサイズは診断基準には入っていますが、必須項目にはなっていません。ウエストサイズで知る糖尿病の危険度でもお話ししましたが、ウエストサイズにより、内臓脂肪の量を簡単に推定することができます。内臓脂肪の量は、CTにより、正確に測ることはできます。おへその高さでの、内臓脂肪の量が100p2を超えると、肥満に伴う病気が多くなることがわかっています。内臓脂肪面積100p2に相当するのが、ウエストサイズでは、男性85cm、女性90cmなのです。

内臓脂肪が犯人??

メタボリックシンドロームは、内臓脂肪の蓄積が中心となり、中性脂肪、HDLコレステロール、血圧、血糖値の異常が起こってくるということに重きを置いたのが日本の診断基準です。内臓脂肪は、腹腔内(内臓の周り)に脂肪細胞が集まったものです。脂肪細胞は、名前の通り、脂肪(中性脂肪)をためている細胞です。しかし、脂肪細胞は単に中性脂肪を貯め込んでいるだけではなく、アディポサイトカインと呼ばれるさまざまな物質を出していることがわかってきています。これらのアディポサイトカインには

  • 血圧をあげるもの
  • インスリンの効き目を良くするもの
  • コレステロール、中性脂肪を改善させるもの
  • 食欲を抑えるもの
  • 動脈硬化を直接抑えるもの

など、実にさまざまなものがあります。内臓脂肪がたまると、脂肪細胞からこれらのアディポサイトカインのうち、悪玉のアディポサイトカインが増えてきて、善玉のアディポサイトカインが減る傾向があります。それにより、内臓脂肪がたまると、血圧が上がり、脂質代謝が悪くなり、インスリンの効き目も悪くなってしまうのです。

メタボリックシンドロームをよくするには

高血圧、糖尿病、高脂血症を、それぞれよくする薬はあります。残念ながら、メタボリックシンドロームを予防、治療するお薬は、今のところありません。しかし、お薬を飲まなくても、よくすることができます。2型糖尿病の治療と共通点が多く、食事療法と運動療法です。高カロリーや高脂肪の食事を控えめにし、運動することが大切です。

今後は、内臓脂肪の蓄積を抑える薬や、善玉のアディポサイトカインの働きを増やす薬、悪玉のアディポサイトカインの働きを抑える薬などが、開発されてくる可能性はあります。

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2005年04月06日

Cペプチド(CPR)とは

プロインスリン

今回は、Cペプチド(CPR)を測ると、どうして自分のすい臓からのインスリンの出ぐあいがわかるのかを説明したいと思います。インスリンはすい臓のベータ細胞から出てくるというお話をしました。インスリンはもともとプロインスリンという形で、すい臓のベータ細胞の中にあります。プロインスリンというのは、インスリンにCペプチドがくっついているものです。

簡単に説明すると

  • プロインスリン = インスリン + Cペプチド
  • インスリン    = インスリンA鎖 + インスリンB鎖

となります。

proinsulin.gif

最終的には、プロインスリンは、インスリンとCペプチドに分かれて、すい臓から出ていきます。一つのプロインスリンからは、一つのインスリンと一つのCペプチドができます。つまり、インスリンとCペプチドは同じ量(等モル)すい臓から出ていくのです。

insulin-CPR.gif

そこで、Cペプチドを測定すると自分のすい臓からどのくらいインスリンが出ているかがわかるのです。

インスリンを測ればいいのでは?

それでは、なぜ、インスリンを直接測らないのでしょうか?インスリン治療を受けていない人では、インスリンを測ることにより、自分のすい臓からのインスリンの出ぐあいを調べることができます。実際に、インスリンを直接測ることも多いです。しかし、インスリン治療を受けている場合はどうでしょうか?インスリンを測定すると、測定された値は自分のすい臓から出ているインスリンと、治療で使っているインスリンの両方の合計になってしまいます。つまり、自分のすい臓からどのくらいインスリンが出ているのかを知ることができないのです。しかし、Cペプチドを測ると、インスリン治療中でも、自分のすい臓から出ているインスリンを知ることができるのです。インスリン治療では、インスリンだけを注射しており、Cペプチドは注射していないからです。

その他の点でも、インスリンを直接測るのと、Cペプチドを測るのでは意味合いが少し異なりますが、Cペプチドはインスリン治療中の人でも、自分のすい臓からのインスリンの出ぐあいがわかるということが重要な違いです。

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2005年04月02日

インスリンの出を調べる

インスリンの出を調べる

インスリンはくせになる??糖毒性の解除で、自分のすい臓からインスリンの出が良ければ インスリン治療はやめることもできるというお話をしました。でも、インスリンの出ぐあいって、簡単に調べることはできるのでしょうか?今回は、自分のすい臓からのインスリンの出ぐあいを調べる検査について説明したいと思います。

Cペプチド = CPR = C-peptide immunoreactivity

自分のすい臓からのインスリンの出ぐあいを調べる検査の一つが、Cペプチドです。省略してCPRと呼ばれることもあります。 CPRを測ることにより、自分のすい臓からしっかりインスリンが出ているかどうかがわかります。すい臓からのインスリンの出ぐあいを調べる というと、大変な検査を想像する方もいるかもしれません。Cペプチドを調べるのはそんなに大変な検査ではなく、血液検査や24時間貯めた尿 (24時間蓄尿)で調べることができます。C-ペプチドの評価方法を下の表に示します。

空腹時血中CPR
(ng/ml)
尿中CPR
(μg/日)
グルカゴン負荷後
CPR頂値(ng/ml)
インスリン分泌低下 ≦ 0.5 ≦ 20 ≦ 1.0
インスリン分泌が保たれている ≧ 1.0 ≧ 30 ≧ 2.0

ここに書いてある、グルカゴンというのは、インスリンと同じように 、すい臓から出ているホルモンです。グルカゴンは血糖値を上げる作用があります。血糖値が下がったときに分泌される代表的なホルモンです 。低血糖の治療として使われることもあります。グルカゴンには血糖値を上げる作用のほかに、 直接、すい臓のβ細胞を刺激して、 インスリンを出させる作用も持っているのです。このグルカゴンを注射することにより、インスリンが出るかどうかを調べることもあります。 この表には書いてありませんが、食事の2時間後のCPRを測ることも多いです。血糖が上がったことに反応して、 すい臓からインスリンが出るかどうかを調べるためです。

インスリン治療は必要か

上の表で、「インスリン分泌低下」となった場合にはインスリン治療が必要になることが多いです。「インスリン分泌が保たれている」 となった場合は、食事療法、運動療法だけで、または飲み薬で、治療できることが多いのですが、インスリンが必要になる場合もあります。 ただし、ここに書いてあるのはおおよその目安であり、そのときの血糖コントロールの状態にもよります。 血中のC-ペプチドは採血のときの血糖値により左右されます。空腹時といっても、血糖値が高ければ、CPRは高くなるはずですし (血糖を下げるためにインスリンが多く出ているはず)、血糖値が低ければ、CPRは低いことが予想されます。同じように、 蓄尿のCPRは一日の血糖値に左右されます。

したがって、血糖値の状態、そのときの治療法なども考えて総合的に評価する必要があります。 たとえば、インスリンの出を良くする薬を飲んでいるのにCPRが低めであれば、 自分のすい臓からのインスリンの出ぐあいは悪いと判断せざるを得ません。 また、腎臓が悪いときには血中のC-ペプチドは高くなり、尿中のC-ペプチドは低くなるので、注意が必要です。 最終的には血糖コントロール状況、現在の治療法、合併症のぐあいなどを考慮して、インスリン治療が必要かどうかを判断しています。

CPRを測ると、どうしてインスリンの出ぐあいがわかるのでしょうか?これについては、また説明したいと思います。

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