2005年03月29日

糖毒性の解除

一度インスリンを使うとやめられない??

インスリンはくせになる??」で、 2型糖尿病の場合はインスリンをやめられるかどうかは、 ケースバイケースで、インスリンが出なくなっている理由によるとのお話をしました。 今回は、このことについて説明したいと思います。

糖毒性

2型糖尿病でインスリンを使うケースはいろいろありますが、血糖値が高いことが多いです。 血糖値が高くなると、なんとか血糖値を下げようと、すい臓のβ細胞はムチ打たれ、がんばってインスリンを出します。 これで、血糖値が下がればいいのですが、下がらなかった場合、そのうちすい臓は疲れてきてインスリンが出にくくなります。 それにより血糖値が上がると、高血糖のために

  1. すい臓のβ細胞からのインスリンの出が悪くなる
  2. 筋肉、肝臓などで、インスリンの効き目が悪くなる

ということが起こります。その結果ますます血糖値が高くなり、ますます

  1. インスリンの出が悪くなる
  2. インスリンの効きが悪くなる

という悪循環になります。高血糖が悪さをしてどんどん悪循環になるため、このことを「糖毒性」と呼んでいます。 この悪循環をなんとか断ち切らないと血糖値は下がってきません。

「糖毒性」を断ち切るにはインスリン治療が有効

この悪循環を断ち切るのに、インスリン治療は有効です。インスリンを使うと

  1. インスリンの効果で、血糖値が下がる
  2. 血糖値が下がると、すい臓のベータ細胞は、ムチ打たれなくなり、休息をとることができる
  3. すい臓のベータ細胞は、休むことにより、インスリンの出が復活してくることがある。
  4. 血糖値が下がると、筋肉、肝臓でのインスリンの効き目が良くなる

外から、インスリンを注射することにより、血糖値を下げると、「糖毒性」がなくなり、

  • 筋肉や肝臓でのインスリンの効き目が良くなる。
  • インスリンの出も良くなる。

というように、良い循環になります。これを「糖毒性を解除する」と呼びます。

血糖値が高いときにインスリン治療を始めたときは、インスリンの使用量は最初は徐々に増えることが多いです。 血糖値が良くなってくると、インスリンの必要量が減ってきます(糖毒性が解除されたということです)。 インスリンを使用し、糖毒性を解除し、インスリンの出が復活し、十分出てくるようになれば、 インスリンをやめることができます。たとえかなり多くのインスリンの量を使っても、 インスリンの出が良くなってくればインスリンはやめられます。逆に、注射しているインスリン量は少なくても、 自分のすい臓からのインスリン分泌が少なければ、インスリンをやめることはできません。

インスリンをやめることはいいこと???

そもそも、インスリンをやめることはいいことなのでしょうか?確かに飲み薬と比べると、インスリンは、 注射をしないといけないので面倒かもしれません。この点はデメリットです。しかし、 インスリンはもともと自分の体から出ているものを注射でうっているので、体にとっては「やさしい」治療です。 飲み薬はもともと体に無いものを飲んでいるのです。

  • インスリンを使おうが、
  • 飲み薬を使おうが、
  • 食事、運動療法だけでやっていこうが、

「血糖を良くしておく」ことが最重要課題です。

注射は痛いという間違った思い込みをしていてインスリン注射を怖がる人もいます。実際は、技術の進歩により、 インスリン注射の針は改良されており、ほとんどの人は注射していることさえも感じないほどです。血液検査のときの針とは、 比べ物にならないほど細い針です。血液検査はどう考えても「痛い」と思います。

インスリンはくせにはならない

くり返しになりますが、インスリンがくせになることはありません。インスリンをやめられるかどうかは、 自分のすい臓からインスリンが十分に出ているかどうかによります。血糖値が高い状態が続くと、 「糖毒性」でインスリンの出が悪くなっていることがあります。糖毒性を解除しても、インスリンの出が悪い場合は、 インスリンをやめられないということになります。しかし、これは、インスリンがくせになってやめられないのではなく、 もともと、すい臓からインスリンの出具合が悪いからやめられないのです。

インスリンがくせになるのが怖い

という理由で、インスリン治療を怖がらないようにしましょう。

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2005年03月27日

インスリンはくせになる??

患者 「インスリンは一度つかったら、くせになってやめられないんですよね」

医師 「インスリンはくせにはならないですよ」

患者 「じゃぁ、一度、使ってもやめられるんですか?」

いままで、なんどとなく、この会話をしてきたような気がします。

インスリン治療は最終手段??

インスリンを使っている人 = 重症な糖尿病

と考えている人が多いです。

「インスリンを使わないといけないほど悪いんですか?」

「食事、運動をがんばってきたのに、どうしてインスリンなんですか?」

と、インスリンにあまり良いイメージはないようです。

確かに昔は、食事療法、運動療法をやって、飲み薬を飲んでも、いよいよ血糖のコントロールがつかなくなってから インスリンを使うことが多かったようです。 そのため、インスリンに対してよいイメージがないのかもしれません。 最近では、インスリンはそんな消極的な使い方ではなく、最初のうちから積極的に使うことが多いです。 そもそも重症な糖尿病ってなんでしょうか?重症な糖尿病=インスリンを使っている糖尿病では決してありません。強いて言うならば、合併症が進んだ糖尿病が重症な糖尿病でしょうか。 合併症を進まないためには、血糖を良くしておくことが大切です。 食事療法、運動療法だけで治療を受けていて悪い血糖値が続くよりは 飲み薬なり、インスリン注射をして良い血糖値を保ち、合併症が進まないことのほうがよっぽど大切です。インスリン注射を早くから行うようになった理由はいろいろありますが、インスリン注射をする注射器や針などの進歩によって、インスリン注射が手軽に行えるようになったのも大きな理由です。

一度インスリンを使うとやめられない??

この質問はほんとに、日常の診療で本当に多い質問です。インスリンを患者さんにお勧めするケースはいろいろあります インスリンをやめられるかやめられないかは自分のすい臓からインスリンがしっかり出ているか、出ていないか、にかかっています。

1. 自分のすい臓からインスリンがしっかり出ている場合
なんらかの理由でインスリン治療を始めても、やめることができます。インスリンがくせになってしまいやめられないということはありません。
2. 自分のすい臓からインスリンがあまり出ていない場合
1型糖尿病(インスリンを作っている、すい臓のβ細胞がやられてしまうタイプの糖尿病)の場合は、 インスリンが出なくなっているので、インスリンをやめることはできません(一時的にインスリンが不要になることはあります)。
2型糖尿病の場合はケースバイケースです。インスリンが出なくなっている理由によります。

続きは、次回お話したいと思います。「糖毒性」がキーワードになります。

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posted by ベスト at 18:28 | Comment(2) | TrackBack(0) | インスリン治療

2005年03月23日

ウエストサイズで知る糖尿病の危険度

「ウエストのサイズが糖尿病の危険度の有効な指標になることが、米国成人男性、約3万人に対する疫学調査でわかった」 との報告が米臨床栄養学会誌に掲載された。一部新聞で報道されているので、知っている方もいると思います。

American Journal of Clinical Nutritionという雑誌に掲載された報告です(要約はPubMedで読むことができます)。

27270人の米国成人男性を13年間追跡調査した研究です。ウエストサイズ、BMI、ウエストサイズ(W)とヒップのサイズ(H)の比(W/H)を5段階にわけてみたところ、次のようなことがわかりました。

  • BMIが高くなるにつれて、2型糖尿病になりやすい。
  • ウエストサイズが大きくなるにつれて、2型糖尿病になりやすい。
  • W/H比が高くなるにつれて、2型糖尿病になりやすい。

さらに、

  • BMIが同じでも、ウエストサイズが大きい人は糖尿病になりやすい

こともわかったのです。つまり、

  • 同じ身長、体重でもウエストサイズの大きい人ほど糖尿病になりやすい

ことがわかったのです。

BMIは肥満度を示す指標です。「全身の脂肪量」を推定する指標です。しかし、筋肉量が多い人も、BMIが高くなるという弱点も持っています。一方、ウエストサイズは内臓脂肪量を反映する指標と考えられています。同じBMIでもウエストサイズが大きくなると、糖尿病になりやすくなるメカニズムは正確にはわかっていません。

脂肪には、内臓脂肪と皮下脂肪があります。内臓脂肪とは文字通り内臓にある脂肪です。腸の周りなどについているものです。体の表面からつかめる脂肪は、皮下脂肪です。内臓脂肪が増えると糖尿病だけでなく、さまざまな病気が起こりやすくなります。内臓脂肪は皮下脂肪よりも悪いと考えられています。

脂肪組織は単に脂肪を貯めこむものではなくて、いろいろなホルモンを出している臓器であることがわかっています。その中にはインスリンの効き目を良くするようなホルモンもあれば、悪くするホルモンもあります。内臓脂肪が増えるとある種のインスリンの効き目を良くするホルモンが減り、インスリンの効き目を悪くするホルモンが増えることがわかっています。このことが、内臓脂肪が増えると糖尿病が起こりやすくなる一つのメカニズムですが、これだけではありません。内臓脂肪は皮下脂肪に比べて、肝臓に近い位置にあるため、肝臓に悪い影響を与えやすいということもメカニズムの一つです。

「脂肪」は糖尿病の分野の中でも、最近どんどん研究が進んでいる分野です。将来、糖尿病の治療、予防などに役立ちそうな研究も進んでいます。

さて、話しはウエストサイズに戻ります。論文にはウエストサイズが最も大きかったグループ(101.6-157.5センチ)は最も小さかったグループ(73.7-86.4センチ)よりも12倍糖尿病になりやすかったと報告されています。しかし、この報告は、米国男性のもので、これをこのまま日本人にあてはめることはできません。日本人は欧米人と比べると、肥満度が小さくても、2型糖尿病を起こしやすいことがわかっています。

日本肥満学会の基準では

  • 男性ではウエスト85センチ以上
  • 女性ではウエスト90センチ以上

で内臓脂肪が蓄積している可能性があるとされています。これが、一つの目安になると思います。内臓脂肪が蓄積しているかを正確に知る方法としては、CT検査がありますが、一般的な検査ではありません。

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2005年03月22日

ペットボトル症候群

病気の名前にはときどき変わった名前があります。ペットボトル症候群もそのうちの一つです。ペットボトル症候群とはどのような病気なのでしょうか?

ペットボトル症候群とは

炭酸飲料、コーラ、果汁飲料などの清涼飲料水を飲むうちに、高血糖になり、知らぬ間に糖尿病が進み、ひどい時は糖尿病性ケトアシドーシスとなり、意識の混濁などを起こします。糖尿病性ケトアシドーシスとは、糖尿病が非常に悪化した状態で、普通は、インスリン注射が必要な人が、インスリンを中断したときに起こるものです。ペットボトルに入っている清涼飲料水を飲んでいたことから、この名前がつけられました。清涼飲料水ケトーシス、ソフトドリンクケトーシスなどと呼ばれることもあります。

ペットボトル症候群を起こすのは、若い肥満気味の男性が多いです。ほとんどの方が入院の上、インスリン治療が必要になります。しかし、インスリン治療で、血糖値が改善した後は、薬剤を使わずに血糖値を良好に保てることが多いのです。もともとは、境界型や食事療法、運動療法で良好な血糖コントロールになるはずの人が、糖尿病の中でもっとも重症な糖尿病ケトアシドーシスまで悪化してしまうのです。どうしてでしょうか?

ペットボトル症候群の機序

清涼飲料水は、ほとんどが約10%の糖分を含んでいます。コップ1杯(200ml)飲むと、20gの糖質をとったことになります。これは80kcalにあたり、ご飯をお茶碗に軽く半杯食べたのと同じカロリーになります。しかも、清涼飲料水はご飯と異なり、単純糖質であるため血糖値が上がりやすいのです。しかも、満腹感がでにくいのです。

インスリンの効き目が少し悪くなっている人が清涼飲料水を飲むと

  1. インスリンの効き目が少し悪くなっている人が、清涼飲料水を飲むと、血糖値が上がります
  2. 血糖値が上がると、のどが渇いてきます。
  3. のどの渇きを癒すために、清涼飲料水を飲むと、一時的には、のどの渇きはよくなるかもしれません。
  4. しかし、清涼飲料水を飲んだ結果として、ますます血糖値が上がります。
  5. 血糖値が上がる結果として、ますますのどが渇きます。
  6. のどが渇くため、渇きを癒すために清涼飲料水を飲むと、さらに血糖値が上がります。

このように悪循環になると、本来は血糖値があまり高くない「境界型」の人でも、血糖値はぐんぐんと上がり、糖尿病性ケトアシドーシスになってしまうのです。のどが渇くため、清涼飲料水の入った1.5Lのペットボトルを1日2-3本飲む人も珍しくありません。3本の飲むとカロリーだけでも1800kcalとなります。

清涼飲料水はやめましょう

糖尿病でない人でも、清涼飲料水を飲むことにより、血糖値はぐんぐん上がり、糖尿病性ケトアシドーシスに至ることがあるのです。糖尿病と診断されている方は、清涼飲料水は飲むべきではありません。糖尿病の食事では食べてはいけないものはないといわれてはいますが、清涼飲料水だけは避けるべきです。とくに、のどが渇いたときに清涼飲料水を飲むのは絶対に避けましょう。血糖値が高いときに、清涼飲料水で渇きが治まっても一時的なものです。それは、上で説明したとおりです。のどが渇いたときは水、お茶にしましょう。

清涼飲料水は

  • 単純糖質であり、急激に血糖値をあげやすい
  • 中性脂肪をあげやすい
  • 同じカロリーのほかの糖質と比べて満腹感が得られない
  • のどが渇いたとき飲んでいると、知らず知らずのうちに、かなりのカロリーオーバーとなる

と、悪い点をあげるときりがないです。

飲料水の成分に注意

糖尿病の患者さんは、「清涼飲料水を飲むのはよくない」と知っている方は多いです。しかし、スポーツドリンクや野菜ジュースなどを、お茶よりも健康に良いと考えて飲んでいる方がときどきいます。スポーツドリンクも10%近くの糖分を含んでいることが多く、炭酸飲料、ジュースと同じです。野菜ジュースも糖分を含んでいるものがあります。そもそも、野菜はジュースとしてとるよりも、野菜そのままでとるほうが食物繊維をとる、満腹感を得るという点でもよいのです。

繰り返しになりますが、糖尿病の食事で食べてはいけないものはないといわれていますが、清涼飲料水だけは避けるようにしましょう。清涼飲料水を飲んでいる方は、これをやめるだけでも、血糖コントロールがよくなることがあります。

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2005年03月16日

食品交換表とは

食事療法の基本でお話した通り、糖尿病の食事療法の原則は

  1. 適切なカロリーの摂取
  2. 糖質、脂質、蛋白質をバランスよく食べる

です。

このような食事の献立を誰でも立てられるように作られたものが、 糖尿病食事療法のための食品交換表です。

食品の分類

食品交換表では、食品に含まれている栄養素によって、食品を6つのグループに分類しています。

表1:主に糖質(複合糖質)を含む食品
穀物、いも、糖質の多い野菜、豆などです。
表2:くだもの
ほとんどが単純糖質の果糖です。
表3:主に蛋白質を含む食品です。
魚介、肉、卵、チーズ、大豆とその製品などです。
表4:牛乳と乳製品(チーズを除く)
カルシウムの供給源でもあります。
表5:主に脂質を含む食品
油脂、調味料のドレッシング、マヨネーズ、ベーコンなどです。
表6:野菜、海草、きのこ、こんにゃく

食品が6つのどのグループに含まれているのかを知っておくと、栄養バランスのよい献立を立てることができます。

食べる量のものさし

食品交換表では、80キロカロリーの食品の量を1単位と呼んでいます。

1単位=80キロカロリー

食品交換表には表ごとに各食品の1単位当たりの重量がグラムで示してあります。

指示エネルギーが1600キロカロリーの場合では、1単位=80キロカロリーなので、

1600÷80=20単位

となり、1日20単位の食品を選んで献立をつくればよいということです。

20単位のうち、どの表から何単位を摂取するかについては、代表的な例は食品交換表に載っています。 具体的には、担当医、栄養士とも相談して決めてください。

食品は「交換」できる

表1から、1日12単位食べるように指示されたとします。3食に分けると1食4単位になります。 単位数が4単位であれば、表1の中から好きなものを食べることができます。 ご飯200gの代わりに、食パン120gを交換して食べることができます。 このように、同じ「表」の中にある食品であれば、どの食品を摂取しても、栄養のバランスが崩れることはありません。

食事療法のバイブル

食品交換表は、昭和40年に初版が発行され、以後、改定が重ねられ、長い間、糖尿病患者さん、 医療関係者に使われている本です。糖尿病の食事療法のために必須の本です。 写真も多くわかりやすいと思います。献立の例は、ほとんど載っていませんが、食事療法の基礎を知るためには必須の本です。

糖尿病の食事の献立に関する本はいろいろ出ています。 献立の本も参考になると思いますが、食品交換表を理解していると、自分でいろいろとアレンジを加えることができます。

糖尿病食事療法のための食品交換表
日本糖尿病学会

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2005年03月11日

食事療法の基本

食事療法の基本は

  1. 適切なカロリーの摂取
  2. 糖質、脂質、蛋白質の適切なバランスをとる

です。

適切なカロリーの摂取

過剰なカロリーを摂取すると、体重が増えてしまいます。すると、インスリンの効き目が悪くなり、 悪循環になってしまいます(糖尿病の治療 もご覧ください)。

逆に、体重が減るとインスリンの効き目はよくなり、血糖値は改善します。 適切なカロリー摂取は体重減少をきたす前に、血糖コントロールがよくなることが知られています。

適切なカロリー摂取は糖尿病治療の根本です。

それでは、適切なカロリーとはどのように決めればよいのでしょうか?

原則は エネルギーバランスを均衡に保つ(または負にする)ということです。

つまり、

  • エネルギー摂取量(食事量)と
  • エネルギー消費量

のバランスを保つことです(減量する場合は、負に保つ)。

エネルギー消費量は

  • 基礎代謝
  • 食後の熱産生
  • 身体活動に伴うエネルギー消費(運動量)

から成り立っています。

  • 基礎代謝とは、呼吸をしたり、心臓を動かしたり、生命を維持するために必要な最低限のエネルギーのことです。
  • 食後の熱産生とは、食事をとった後に、自律神経を介して起こる熱産生です。食事をとった時に、汗が出たり、体温が上昇して体がほてったりするのを誰でも経験していると思います。それが、食後の熱産生です。
  • そして、運動により使うカロリーです。

しかし、これらのそれぞれを正確に測定することは困難です。

基礎代謝は、年齢、身長、体重、脂肪量、筋肉量などからある程度推定することはできますが、 正確な測定は困難です。

食後の熱産生を測定するのも困難です。運動量も体重、運動の種類、運動時間などにより、 おおよそ予測することはできますが、正確に測定するのは困難です。

エネルギー消費量を正確に測定するのは困難であり、それではエネルギー摂取量(食事量)を決めることができません。 それでは、どうすればよいのでしょうか?

妥協策として、まず標準体重を求めて、その人の運動量に応じて、必要なエネルギー量を推定して、 食事量を決めることが多いです。標準体重の決め方にはいろいろありますが、Body Mass Index (BMI)法を使うことが多いです。

BMIは

BMI = 体重(kg) ÷ 身長(m) ÷ 身長(m)

で求めることができます。

BMI 22前後の人が最も病気になりにくいとの研究結果から標準体重は

標準体重 = 身長(m) x 身長(m) x 22

で求めることができます。

摂取エネルギーの目安は

摂取エネルギー量 = 標準体重 x 身体活動量

で求めます。

ただし身体活動量(kcal/kg標準体重)は

労作 身体活動量(kcal/kg標準体重)
軽労作(デスクワークが主な人、主婦など) 25-30
中労作(立ち仕事が多い職業) 30-35
重い労作(力仕事の多い職業) 35-

となります。

この計算式で求められる摂取エネルギー量の目安は、あくまで「目安」であって、 年齢、性別、合併症の有無、肥満の有無などによって、適切な摂取エネルギー量は変わります。

さらに、体重の推移をみて変えていくこともあります。 摂取カロリーを守っていても、どんどん太っていくようであれば、摂取カロリーを減らしていく必要があります。 肥満が改善しない場合も、減らす必要があるかもしれません。 逆に、良好な血糖コントロールがされていて、どんどんやせていく場合には少しずつ摂取カロリーを上げていくことがあります。 ただし、血糖コントロールが悪いときに体重が減っていくのは、摂取カロリーが少ないからではなく、 血糖コントロールが悪いため体重が減っているので、摂取カロリーを減らすことはありません。 血糖コントロールをよくすることが先決です!

糖質、脂質、蛋白質の適切なバランスをとる

摂取エネルギー量の50-60%を糖質(炭水化物)とし、蛋白質は標準体重1kgあたり1.0-1.2g、 残りを脂質でとるようにするのが基本です。脂質の摂取量は総エネルギー量の25%以内にするようにします。

これだけの説明で、食事を決められる人はほとんどいないと思います。 糖尿病の方は、栄養士に指導を受けることをお勧めします。保健所などでも受けられることがあります。

重要なポイントをあげておきます。

脂肪の摂取を控える
脂肪を摂取し過ぎると、インスリンの効き目が悪くなる可能性があります。脂肪を摂取しすぎると、体重が増加しやすくなります
単純糖質の摂取を控える
同じ炭水化物(糖質)でも、ご飯、パン、麺類などの糖質は「複合糖質」とよばれ、消化に時間がかかり、満腹感も得やすくなります。 一方、果物、清涼飲料水、お菓子などに含まれている、ショ糖、果糖などは「単純糖質と呼ばれ、腸からすぐに吸収されます。 すぐ吸収されるため、血糖値が上がりやすくなります。 また、複合糖質と比べると満腹感が得にくくなります。 果物はビタミンを含むのである程度の摂取は必要ですが、とり過ぎないようにしないといけません。

簡単に言うと、脂っこいものと甘いものを食べ過ぎないようにするのが基本です。 繰り返しになりますが、少なくとも一度は栄養士に指導を受けることをお勧めします。

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posted by ベスト at 23:33 | Comment(2) | TrackBack(0) | 食事療法

2005年03月10日

糖尿病の治療

2型糖尿病の治療

2型糖尿病の治療の原則は

  • 食事療法
  • 運動療法
  • 薬物療法(飲み薬、インスリン注射)

の3本柱です。

今回は、それぞれについてごくごく簡単に説明したいと思います。

食事療法

食事療法の基本は

  • 適切なカロリーの摂取
  • 糖質、脂質、蛋白質の適切なバランスをとる

です。

食事療法は、運動療法や薬物療法をしていない人も、している人も必須です。 血糖値が高いときに、食事療法をせずにカロリーの高い食事をすると、

  1. ますます血糖値は上がります。
  2. ここで、食事療法をせずに、薬物療法を行うと、一時的には血糖値は下がるかもしれません。
  3. 食事で消化・吸収されたブドウ糖は、一部はエネルギーとして使われます。余ったものは最終的には肝臓、筋肉、脂肪などに貯められます。食事が多くなっても、使われるエネルギーは変わりません。それでも、血糖値が下がったということは、貯め込まれるエネルギーが多くなったということです。それは、主に脂肪になります。(糖の動きの説明もご覧ください)
  4. 脂肪に貯められるということは、太るということです。
  5. 太ると、インスリンの効きが悪くなります。
  6. インスリンの効きが悪くなると、薬の効果が弱くなり、血糖値が上がります。
  7. 血糖値を下げるためにお薬を増やすことになり、さらに太ってしまい、インスリンの効きが悪くなり、血糖値が上がり、血糖値を下げるためにお薬を増やし、さらに太ってしまい・・・・

というように悪循環になってしまいます。

この悪循環を避けるためには、適切なカロリーの摂取が必要になります。 適切なカロリーであれば、お薬を使っても、どんどん太っていくということはありません。 詳しくはまたお話したいと思いますが、少なくとも、体重が増えない程度の食事にはしないといけません。 繰り返しになりますが、食事を守っているときにお薬を使えば、どんどん太っていくということはありません。

運動療法
  • 運動療法は、インスリンの効きを良くします。 したがって、インスリンの出る量が変わらなくても、運動をすると血糖値はよく下がります。
  • 運動により、エネルギーが消費され、体脂肪、体重が減ります。
  • 高血圧や高脂血症をよくしたり、狭心症、心筋梗塞などの予防効果もあります。

運動療法をすると、たとえ体重が減らなくても、インスリンの効き目はよくなり、高脂血症もよくなります。 食事療法だけで、体重を減らすと、体脂肪とともに筋肉も落ちてしまします。 しかし、運動療法も一緒に行うことにより、筋肉がおちていくのをある程度抑えることができます。

運動療法はこのように、いろいろな効果があります。 しかし、糖尿病の合併症や、糖尿病以外の病気があると、 場合により運動療法ができないことがあります。積極的に運動療法をして良いかは、必ず主治医に確認するようにしましょう。

薬物療法

薬物療法を行うときも、食事療法、運動療法が基本です。 特に食事療法が守れないまま、薬物療法を行うと、先ほどご説明したとおり、どんどん太っていくことがあります。

以上のとおり、2型糖尿病の治療は

  • 食事療法
  • 運動療法
  • 薬物療法(飲み薬、インスリン注射)

が基本です。

しかし、同じ2型糖尿病でも、血糖値が上がっている原因は、人により異なります。

  • インスリンの効きが悪いのが、糖尿病の主な原因となっている人
  • インスリンの出が悪いのが、糖尿病の主な原因となっている人

などさまざまです。(糖尿病の分類もご覧ください)

ごくごく単純にいうと

  • インスリンの出が悪い人は、薬物療法が必要になることが多いです。もちろん、食事療法、運動療法も必要です。
  • インスリンの出はいいものの、インスリンの効きが悪い人は、食事療法、運動療法が中心となります。 食事療法、運動療法でよい血糖コントロールが達成できなければ、薬物療法が必要です。

薬物療法を行うにしても、インスリンがよく出ているか、出ていないかで、使う薬が異なってきます。

この点についてはまた説明したいと思います。

1型糖尿病の治療

1型糖尿病は、基本的にはインスリンの分泌が著しく低下しているため、インスリン治療が必要になります。

食事療法については、少なくとも、太らないようなカロリー摂取にする必要があります。

運動療法については、血糖コントロールのために必ずしも有効との証拠はありませんが、 体力の保持、増進に役立ったり、、高血圧や高脂血症を良くしたり、狭心症、心筋梗塞などの予防効果があります。

食事療法、運動療法、薬物療法(糖尿病の飲み薬、インスリン)の詳しいことは、また説明していきたいと思います。

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2005年03月06日

糖尿病の分類

  • 「インスリンの出が悪い」
  • 「インスリンの効きが悪い」

このどちらか、または両方が、原因となり糖尿病になります。 今回は、この点について、糖尿病の分類と合わせて説明したいと思います。(血糖値とインスリンの関係については糖の動きもご覧ください。)

1型糖尿病

すい臓のインスリンを作り出す細胞(β細胞)が破壊されてしまい、 インスリン分泌が著しく低下し、インスリンが不足するために起こる糖尿病です。 「インスリンの出が悪い」タイプの糖尿病です。 インスリンの分泌が著しく低下しているため、インスリン治療が必要になります。

β細胞が破壊されるスピードはさまざまです。

数日間から数週間で破壊され、糖尿病を発症すると考えられる
「劇症1型糖尿病」
数年から数十年かけて破壊され、糖尿病を発症すると考えられる
「緩徐進行型1型糖尿病」
その中間の
「急性発症1型糖尿病」
などがあります。

2型糖尿病

  • 「インスリンの出が悪い」のが、糖尿病の主な原因となるタイプ
  • 「インスリンの効きが悪い」のが、糖尿病の主な原因で、それに「インスリンの出が悪い」のを伴うタイプ

などがあります。

同じ2型糖尿病でも、

  • 「インスリンの出が悪い」のが主な原因か
  • 「インスリンの効きが悪い」のが主な原因か

人により、異なります。

また、それにより、治療法も異なります。 生活習慣病と呼ばれる糖尿病は、この2型糖尿病です。

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日本の糖尿病患者さんの90-95%は2型糖尿病と考えられています。

なお、このふたつのタイプ以外に、 「その他の特定の機序、疾患によるもの」、 「妊娠糖尿病」 があります。

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2005年03月05日

糖の動き

今回は、血糖値インスリンの関係について、もう少し詳しくお話したいと思います。

健常者のブドウ糖、インスリンの動き

まず、インスリンは食事をしなくても、常に一定量はすい臓から出ています。 血糖値を上げるホルモンは複数あるので、 インスリンが出ないと、どんどん血糖値が上がってしまいます。 そうならないように常に一定量はインスリンが出ているのです。

この一定量出ているインスリンを、インスリンの「基礎分泌」と呼んでいます。

では、食事を食べたときはどうなるのでしょうか?
食事を食べると

  1. 腸から食べ物が消化・吸収されて、ブドウ糖が血液の中に入ります。つまり、血糖値が上がります。

  2. 血糖値が上がるとすい臓がそれを感知して、インスリンを「ドバッ」と出します。これをインスリンの「追加分泌」と呼びます。

  3. 肝臓にインスリンとともにブドウ糖がくると、肝臓はブドウ糖を取り込みます。ブドウ糖の一部は、グリコーゲンとなって肝臓に貯められます。

  4. 肝臓をすり抜けたブドウ糖により、血糖値が上がります。

  5. しかし、インスリンが「ドバッ」と出ているので、血液中のブドウ糖は脂肪組織や筋肉に取り込まれます。したがって、血糖値はあまりあがらずに、徐々にもとの値に戻っていきます。

  6. 血糖値が下がると、インスリンの分泌も下がり、「基礎分泌」に戻ります。

  7. 血糖を上げるホルモンとインスリンの「基礎分泌」のバランスで、正常の血糖値が保たれます。

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糖尿病ではどうなってるの?

糖尿病では、どうして血糖値が上がってしまうのでしょうか? 糖の流れから考えて

  • インスリンが十分に出ていない
  • インスリンが出ていても肝臓、脂肪組織、筋肉にインスリンが十分効かない

と血糖値が上がってしまいます。そのほかの原因でも血糖値が上がってしまいますが、ほとんどがこの

  • 「インスリンの出が悪い」
  • 「インスリンの効きが悪い」

が原因になっています。

この両方ともが原因となって、糖尿病になることが多いのですが、 この点についてはまたお話したいと思います。

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2005年03月01日

インスリンとは

インスリンはすい臓から分泌されているホルモンです。 すい臓は胃の後ろで、十二指腸に取り囲まれている臓器です。

すい臓は、インスリンだけでなく、 血糖を上げるホルモンであるグルカゴン というホルモンも分泌しています。 さらに、食べ物を消化するのに必要な消化酵素も出しています。

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インスリンやグルカゴンは、消化酵素とは違う細胞から分泌されています。 インスリンやグルカゴンは、すい臓の中の すい島(ランゲルハンス島)と呼ばれている細胞が集まっているところから分泌されています。

さらに細かいことをいうと、

  • インスリンは、すい島の中のβ(ベータ)細胞
  • グルカゴンは、すい島の中のα(アルファ)細胞

から分泌されています。

インスリン=血糖を下げるホルモン

インスリンは血糖値を下げるホルモンです。

血糖値とは「血液の中のブドウ糖の量(濃度)」 とのお話をしました。

つまり、インスリンとは、血液の中のブドウ糖の量を下げるホルモンということです。

では、血液の中のブドウ糖はどこに行くのでしょうか?

インスリンは、すい臓から血液中に分泌されます。 血液中に出たインスリンは肝臓、筋肉など全身の細胞の 表面にある鍵穴(受容体)にくっつきます。 インスリンが細胞の鍵穴にくっつくと、 その細胞は血液の中のブドウ糖を細胞の中に取り込むのです。

インスリンが十分効いていると、 血液の中のブドウ糖が、どんどんと細胞の中に取り込まれるので、 「血液の中のブドウ糖の量が減る」=血糖値が下がるのです。

細胞の中に取り込まれたブドウ糖は、細胞のエネルギー源として使われます。 肝臓、脂肪組織、筋肉などに取り込まれたブドウ糖もエネルギー源となりますが、 余ったブドウ糖は、中性脂肪、グリコーゲンなどに姿を変えて、 肝臓、脂肪組織、筋肉に貯めこまれます。 これらの貯め込まれた中性脂肪やグリコーゲンは、食事をしていないときや、運動をするときなど、必要になったときに使われるのです。

まとめ

インスリンは、すい臓から分泌される血糖値を下げるホルモンです。 血糖値が下がるのは、血液中のブドウ糖が、 肝臓、脂肪組織、筋肉をはじめとした全身の細胞に取り込まれるからです。 血糖とインスリンの関係については、またお話したいと思います。

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